(1)      (昭和51年6月7日第三種郵便物認可)美術新聞社報 平成29年(2017) 11月24日(金曜日)

2007-09-15
【連載】 書写・書道教育今とこれから[4] − 青山浩之 (リレー論壇)
−本文より抜粋−
 小・中学校の国語科書写、高等学校の芸術科書道を通して、児童・生徒は何を学び、どんな力をつけていくのか。このことは、「学習指導要領」の改訂作業が進められているこの時期にこそ、日頃学校教育現場、教員養成現場で指導に当たる私たち自身が、的確に認識し、十分にすり合わせをしていなければならないことであろう。本稿では、これからの教育現場で求められる「学力」という観点から、まずは書写教育の今後について考えてみることにしたい...


【本文】

「書写でどんな力をつけるのか」  青山浩之


 小・中学校の国語科書写、高等学校の芸術科書道を通して、児童・生徒は何を学び、どんな力をつけていくのか。このことは、「学習指導要領」の改訂作業が進められているこの時期にこそ、日頃学校教育現場、教員養成現場で指導に当たる私たち自身が、的確に認識し、十分にすり合わせをしていなければならないことであろう。本稿では、これからの教育現場で求められる「学力」という観点から、まずは書写教育の今後について考えてみることにしたい。


改訂の動向と「学力」

 教育改革をめぐる大きな動きと合わせて、平成元年版「学習指導要領」の改訂以降、「新しい学力観」に立つ教育の推進が提唱されてきた。とりわけ平成10年(高等学校は同11年)の改訂では、そうした学習者中心の学力観が、「生きる力」(自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する能力)の育成という概念のもとに具体化され、現行の教育課程の基本理念となっている。

 一方、2000年度(H12)から開始され、以後3年ごとに実施されている「OECD生徒の学習到達度調査」(PISA調査)では、2003年度(H15)の調査において、日本の生徒の「読解力」低下が指摘され、再び「学力問題」がクローズアップされた結果、今回再び「学習指導要領」改訂の焦点ともなってきているという現状である。

 従って、今年4月に行われた「全国学力・学習状況調査」においても、そうした国際比較の結果を踏まえつつ、広い意味での「学力」への関心を国内でも高めていくねらいがあったと思われる。

 とはいえ、中教審をはじめとするこれまでの審議会答申・報告等(公的に発表されたもののうち、本稿と関連するものを別表〈上〉として挙げておく)を通してみてみると、必ずしも一部の報道等でいわれる「学力重視」の方向性が強調されてきたわけでもないことが分かる。そこでは、一層「確かな学力」「基礎学力」を保証していくとしながらも、それを基に習得した知識や技能を活用し自ら探求していく主体的な学習が、今後も基本的な在り方として求められていることが明らかである。要するに「学力問題」は、「学力」を重視する・しないという上辺の問題(量の問題)ではなく、「学力」をどう捉えていくかといった本質的な問題(質の問題)として認識すべきものなのである。こうした経緯をよく認識すれば、教育課程に位置づけられる国語科書写で身につけるべき力も、今後求められていく「学力」に資するものとして、その質が問われていくことになるのは自明ではあるまいか。


これからの「書写力」

 昨年2月に公表された中教審「審議経過報告」の中で、「人間力の向上を図る教育内容の改善」の基本的な考え方の一つとして、すべての教育活動を通じて国語力の育成を重視していく方針が、次のように示された。

==================================================
 言葉は、「確かな学力」を形成するための基盤であり、生活にも不可欠である。言葉は、他者を理解し、自分を表現し、社会と対話するための手段であり、家族、友だち、学校、社会と子どもをつなぐ役割を担っている。言葉は、思考力や感受性を支え、知的活動、感性・情緒、コミュニケーション能力の基盤となる。国語力の育成は、すべての教育活動を通じて重視することが求められる。
==================================================

 つまりこれをみれば、学習や生活の基盤を培うものは言葉にほかならないという見地から、言葉を重視するために「国語力」をいわゆる教科横断的に捉えて育成していくとの方針が示されたことになる。

 こうした「国語力」の育成を重視する考え方は、先にも触れたPISA調査における「読解力」の低下問題が少なからずその背景となっていることは事実であろう。それゆえ、今後求められる「国語力」は次のPISA型「読解力」、

==================================================
 自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力
==================================================

 を踏まえた上で、読む力、書く力を総合的に育成する観点からも捉えることが必要になる。1方、「書写」については、同じく「審議経過報告」の「具体的な教育内容の改善の方向」の中に、言語文化の継承・発展という国語教育の使命としての意味合いから捉えた次のような記述がある。

==================================================
 国語教育は、我が国の文学や言語文化を継承・発展させるという大きな使命がある。文学や言語文化に親しみ、創造したり演じたりするのに必要とされる、読書、鑑賞、詩歌や俳句なども含めた創作や書写などの言語活動ができることが重要である。==================================================

 この点に関していえば、毛筆を含めた書写活動が伝統や文化に裏打ちされた我が国特有の言語文化として重視されることにもなり、これまでの「書写」の枠組みが広がると捉えれば、大きな意義があるといえるであろう。とはいえ、言語文化を狭義に捉えた場合には、「書写」の「学力」も極めて限定的な範囲で考えなければならないこととなり、むしろマイナスという見方もできるかもしれない。

 現行の教育課程では、「書写」は国語科の言語事項に位置づけられ、文字を「正しく、整えて」(小学校)、「速く」(中学校)書くことがねらいとされている。これらは、文字を書くことを通した伝達性や、機能性を重視したねらいであり、それらを身につけることが国語の言語活動に資する「書写力」育成の基本的な捉え方になっている。

 以上を基に考えると、今後の書写教育が目指す在り方、あるいは書写教育でねらう「学力」の捉え方には、次の3つの方向性を挙げることができるだろう。

 一、「正しく、整えて」「速く」書くことをねらいとする従来通りの書写力の育成
 二、新たに示された言語文化の継承・発展を主なねらいとする伝統的な毛筆書写力の育成・強化
 三、これからの国語力に資する書写力を模索し、伝統的かつ現代的な言語文化や文字文化を担う新たな枠組みで捉えた書写力の育成・深化

 いうまでもなく、「書写」の位置づけをもとに、さらに言語文化といった観点を加味すれば、われわれは自らも奮励努力する意味で、第3の方向性を選択することになるのではあるまいか。

 言語文化は、時間的にも空間的にも極めて多様であり、継承されてきた伝統的な言語文化に触れることによって、新しい時代や異文化との関わりを持つ現在の言語文化をよりよく理解することも期待できる。文字は常に言葉とともにあり、言葉の働きを文字に置き換え、実際の言語文化や言語生活の中で機能している。前述の中教審「審議経過報告」からの引用に示されている「言葉の働き」は、つまり文字で表される言葉においても同様に捉える必要があり、文字によって他者を理解したり、自分を表現したりといった機能を、文字を書くことで誰もが実現していかなければならない。「国語力」に資する「書写力」とはいうが、そもそも文字で表される言葉が機能するためには、書写して書き表す文字が、言葉の働きと同様、人と人とをつないだり、実際の言語生活に機能するものでなければならないといった点で、本来、両者に境界はないはずである。


「書写力」の指導

 「正しく、整えて」「速く」書くことは、文字の伝達性や、書く動作も含めた機能性を捉えた「書写力」である。とはいえ、なぜこれらを身につける必要があるのかを本当に理解している学習者が、どれくらいいるだろうか。そして教員は、「大人になって恥ずかしくないように」というような、ありきたりで単純な説明に終始してしまってはいないだろうか。

 書写指導で中心となる学習事項を簡単に示せば、
   姿勢・持ち方、
   筆使い、
   筆順、
   字形、
   配列・配置、
となる。これらについても、なぜ学習するのかを伝えずに指導してしまうことが多い。,蓮⊆蟷悗鮓果的に動かし、疲労の少ない態勢を取るためであり、その上で、△濃画を書く運動性を身につけ、で字形を整えやすく、効率のよい順序を理解する。ここまでは、自分の書きやすさのために身につける事項と捉えてよい。それらを総動員して、い覇匹澆笋垢な源の形を、イ埜やすい字配りを身につけていく。これらは、相手や自分が読みやすい文字(文書)を書くために身につけたい事項と捉えることもできる。

 このように単純に構造化して考えてみると、それぞれが文字を書く過程に欠かすことができない関わりを持っており、1方で身につける意図の違いがあることも理解されるだろう。(別表〈下〉参照)

 以上は一例であるが、実生活に機能する書写力を身につけていくには、実はこうした学習の意図が意識化され、学習者がそれを必要と感じて習得していくことが大切になる。また言葉と同様、相手への意識や書く目的意識を持って文字を書き表すことが、実生活や学習場面に生きて働く「書写力」の基礎ともなるはずである。なお、「学習指導要領」改訂に向けての喫緊の課題は、「国語力」と同様に、様々な教育活動の場で「書写力」を身につける指導の在り方の模索と、そこで捉えるべき「書写力」の策定だというべきであろう。

◆筆者紹介…あおやま・ひろゆき/横浜国立大学准教授・全国大学書写書道教育学会理事(事務局長)
[写真:青山氏]
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