(1)      (昭和51年6月7日第三種郵便物認可)美術新聞社報 平成32年(2020) 3月30日(月曜日)
  

萱原(かやはら)晋のコラム(風信帖/癸隠隠僑亜

ブリヂストン美術館が、リニューアルオープン
 日本の私立美術館について個人の感想でいうと、戦前派の雄は西の大原(1930年開館)、戦後派の雄は東のブリヂストン(52年開館)というイメージなのだが、そのブリヂストンが5年近い犁挂沖瓩ら目覚め、「アーティゾン美術館」として甦る▼名称は「アート」と「ホライゾン」(地平線)を組み合わせたものというから、「新地平を拓く」という、並々ならぬ意気込みが伝わってくる。あの仏ミシュランを抜いて世界シェアトップのブリヂストンをバックにもつ石橋財団(公財)が総力を結集してリニューアルしたのだから、恐らく世界の最先端をゆく、楽しみな美術館となることだろう▼そう言えばかつて、創設者の石橋正二郎(1889〜1976)にインタビューをしたことがある。氏の亡くなる2年前のことだったが、コレクションを始めたキッカケから、戦後の1950年に初めてアメリカ旅行をしたとき、名のある都市には必ず一等地に立派な美術館があることに感銘を受け、当時新築計画を進めていた京橋の本社ビルに急きょ設計変更を指示して2階に美術館を組み込んだ経緯などを楽しげに、かつ熱っぽく話してもらった▼新館のスタートを最も喜んでいるのは、草葉の陰の石橋氏かもしれない。


萱原(かやはら)晋のコラム(風信帖/癸隠隠毅后

ソウル「加耶展」で列島産の「勾玉」を見て
 話には聞いていたが、ソウルの「加耶展」で実際に古代半島の加耶の遺跡から出土した大量のヒスイ製の「勾玉」(まがたま)を見て、感銘を覚えた▼「勾玉」は、列島の縄文遺跡から出土するものが最古例とされる。天皇家の三種の神器の1つとして「八尺瓊勾玉」が伝わっていることも、最近話題となった。大陸や半島での出土例も報告されているようだが、そのほとんどは列島産と見られている。百済や新羅での出土例も多く、宝冠の装飾や耳飾りなどとしても出土しているので、戦後の1時期には「勾玉」は半島起源とする学説も発表されたりした▼が、今回展示されていた加耶出土の「勾玉」はヒスイ製で、この品質のヒスイはアジアでは日本とミャンマーでしか採れないから、今では古代の「勾玉」の高級品は、全てが列島産と広く認識されている。今回の展示でも、「日本の糸魚川周辺遺跡出土のものと同じ組成。倭から持ち込まれたもの」とキチンと説明されていたが、列島は何と「先史時代」から、ヒスイ製の高級「勾玉」を重要な交易品としていたことに、感銘したのである▼糸魚川市にある前5500〜同4000年頃の縄文遺跡からはヒスイの加工工房跡も見つかっており、青森の三内丸山遺跡の勾玉もこの工房製というから、驚きだ。


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どうなる、小学校低学年での「水書用筆」指導
 過日、本社の《書統》の支部長らを集めた勉強会があり、例年通り宮沢正明先生にご講演を頂いたのだが、日々子供たちを直接指導する立場の支部長らの目下の関心事はやはり「水書用筆等」のようで、質問も多かった▼もちろん宮沢先生も、「3学年から始まる毛筆を使用する書写の学習の先取りではありません」「持ち方は鉛筆と同じです」「水筆で、指先や手の柔軟な運動を体感させることが目的なのです」などと縷々ご説明下さっていたが、書塾では1、2年生も既に毛筆で書くことに慣れているだけに、「水筆は鉛筆持ちよ」などと言い聞かせても、なかなか分かってもらえそうにないという悩みも聞かれた▼書写書道学会編の新テキストでも、「弾力性のある筆記具で運筆における筆圧の変化や手指の上下動を体感させる」「硬筆での適切な運筆の習慣の定着を図ることが目的」「筆圧を一定に保って点画を書くことや、字形を整えて書くことが目的ではない」と口を酸っぱくしている▼が、今後この「水書用筆等」をめぐっては、学校現場では書塾に通っている子供といない子供の、受け止め方に差が出ることは間違いなく、書塾でも「学校の先生の言うことと違う」という反応に悩むことになるのではなかろうか。


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「27年ぶり日中名家展」の北京展
 「27年ぶり、日中トップの名家による交流展」であるから、北京展にも相当程度に関わった立場から手前味噌を承知で言わせてもらえば、やはり今年の狃馥山Γ隠安腑縫紂璽広瓩裡院■欧魘イΔ發里世隼廚ΒГ發辰箸癲会場が中国美術館などなら読者各位も分かり易いだろうが、会場となった「中華世紀壇」は筆者も全く予備知識がなかったから、イメージがつかめず、かなり戸惑ってしまった。また、会場としての格というものも、イマイチつかめていない▼が、会場自体は今回の紙面でもご覧頂けたように、悪くなかった。しかも全体のスペースは相当なもので、壁面は必要なら幾らでも使えそうだから、今後この会場での交流展も増えるかもしれない。それにしても、そもそも当初は「今回の北京展は中国書法家協会が主催」と聞かされており、「中国側は人選をやり直し、五〇人規模」「北京展のあと、西安展も構想」などという情報に振り回されながら、実に開幕6日前まで、作品集の編集を日本から手伝った。中国側も、相当にフラつきながらの開催だったと思われる▼とは言え、まだ終わってはいないのだ。「作品は預かっときますから、いつ取りに来ますか?」と言われ、目下必死に日程調整中なのである。


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「ヒエログリフ」の次は「楔形文字」
 「国際文字文化検定協会」を華々しく立ち上げながらまだ狷饂梱畸罎如◆塋源だ!》誌ぐらいしか存在感を発揮できていないのは、我ながら誠に歯がゆい▼だが、同誌にこのところ6回ほど古代エジプトの文字として知られる「ヒエログリフ」についてのエッセーを連載したら、加藤達成先生にえらく褒められてしまい、すっかり気をよくして「おだてブタ」さながら、「じゃあ、次は楔形文字について書いてみようか」と、目下構想を練っている▼とは言え、専門的に研究したわけでもなく、「ヒエログリフ」にしても「楔形文字」についても、西洋美術史を多少学ぶ過程で(これは半世紀近く)かじっただけなので汗顔の至りというほかないのだが、《文字だ!》の次号が出たら、まあ、漫談と思ってお読み頂きたいと思う▼話の端緒として考えているのはやはり、大英博物館のあのナゾのパネル「ウルのスタンダード」や、ルーブル美術館にある、楔形文字で猝椶砲鰐椶鬮瓩遼(犬ビッシリ彫り込まれている「ハンムラビ法典碑」などの、古代メソポタミア(現在のイラクの一部地域)出土の遺品たちなのだが、日本では高校生用の世界史図説あたりなら小さな図版くらいは載っているにしても、まあ、縁遠い世界に近い―。


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