(1)      (昭和51年6月7日第三種郵便物認可)美術新聞社報 平成32年(2020) 7月3日(金曜日)
  

東博が、入館料値上げ!(続)

 東博の入館料の大幅値上げ方針について異論を差し挟んだら、各方面からいろいろお励ましを頂き、同憂の士が少なくないことを実感した▼ある読者からは、「東博の考え方は安易すぎて、論外。博物館法には、国民共有の文化財について、無料で国民に展覧、鑑賞させることと規定されているのだ」、とご教示頂いた。そうなのかと、早速「博物館法」をひも解いてみた。そうしたら、博物館法第二十三条にはこうあった。「公立博物館は、入館料その他博物館資料の利用に対する対価を徴収してはならない」。なるほど、そうなのか▼じゃあなぜ、各館とも大っぴらに入館料を徴収しているか。で、二十三条をよく読むと、後段にこうあった。「但し、博物館の維持運営のためにやむを得ない事情のある場合は、必要な対価を徴収することができる」。なるほど、法律は作る人も使う人も、ちゃんと抜け道が分かっているのである▼だが、東博は「将来のための財務基盤の整備」を掲げているわけだから、これは「やむを得ない事情」とはちょっと違う。ちなみに、海外に目を向けてみると、ソウルの国立中央博物館にしても、中国の上海博物館、天津博物館にしても、すべて入館料は無料。これがグローバル・スタンダードなのだ。
 


東博が入館料値上げ!

爛Ε錺記瓩麓にしていたが、これほどとは----。東博が入館料を四月から一、〇〇〇円(一般・個人)にすると発表した。現行は六二〇円だから、何と六割超という大幅値上げである▼そして館側ではこの値上げは「来館者サービスの向上」のためと謳い、これにより「展示解説の充実」「新感覚の展示の拡大」「庭園の整備」「休憩スペースのリニューアル」などに一斉に着手すると表明している。しかしこれでは、これほどの大幅値上げの説明には到底なるまい▼本音はむろん後段の、「貴重なコレクション」を次代に継承できるように「財務基盤を整備」というところにあるのだろうが、しかし今を営々と生きる庶民(入館者)に「次代のため」の負担を求めるのは、やはり限度というものがあろうし、段階的に引き上げるようなやり方が、経済原理というものだろう▼おそらくは、東博がこうして先陣を切り、少し遅れて国立他館も続々と追随する目論見に違いない。それも「東博は六割、当館は四割」などという戦術かもしれない。それにしても、政府も政府だ。独立行政法人化で自助努力を促すという政策は、間違ってないにしても、「次代のため」の投資を入館者にかぶせる図式となるのは、やはり間違っていると思う。


萱原(かやはら)晋のコラム(風信帖/癸隠隠僑亜

ブリヂストン美術館が、リニューアルオープン
 日本の私立美術館について個人の感想でいうと、戦前派の雄は西の大原(1930年開館)、戦後派の雄は東のブリヂストン(52年開館)というイメージなのだが、そのブリヂストンが5年近い犁挂沖瓩ら目覚め、「アーティゾン美術館」として甦る▼名称は「アート」と「ホライゾン」(地平線)を組み合わせたものというから、「新地平を拓く」という、並々ならぬ意気込みが伝わってくる。あの仏ミシュランを抜いて世界シェアトップのブリヂストンをバックにもつ石橋財団(公財)が総力を結集してリニューアルしたのだから、恐らく世界の最先端をゆく、楽しみな美術館となることだろう▼そう言えばかつて、創設者の石橋正二郎(1889〜1976)にインタビューをしたことがある。氏の亡くなる2年前のことだったが、コレクションを始めたキッカケから、戦後の1950年に初めてアメリカ旅行をしたとき、名のある都市には必ず一等地に立派な美術館があることに感銘を受け、当時新築計画を進めていた京橋の本社ビルに急きょ設計変更を指示して2階に美術館を組み込んだ経緯などを楽しげに、かつ熱っぽく話してもらった▼新館のスタートを最も喜んでいるのは、草葉の陰の石橋氏かもしれない。


萱原(かやはら)晋のコラム(風信帖/癸隠隠毅后

ソウル「加耶展」で列島産の「勾玉」を見て
 話には聞いていたが、ソウルの「加耶展」で実際に古代半島の加耶の遺跡から出土した大量のヒスイ製の「勾玉」(まがたま)を見て、感銘を覚えた▼「勾玉」は、列島の縄文遺跡から出土するものが最古例とされる。天皇家の三種の神器の1つとして「八尺瓊勾玉」が伝わっていることも、最近話題となった。大陸や半島での出土例も報告されているようだが、そのほとんどは列島産と見られている。百済や新羅での出土例も多く、宝冠の装飾や耳飾りなどとしても出土しているので、戦後の1時期には「勾玉」は半島起源とする学説も発表されたりした▼が、今回展示されていた加耶出土の「勾玉」はヒスイ製で、この品質のヒスイはアジアでは日本とミャンマーでしか採れないから、今では古代の「勾玉」の高級品は、全てが列島産と広く認識されている。今回の展示でも、「日本の糸魚川周辺遺跡出土のものと同じ組成。倭から持ち込まれたもの」とキチンと説明されていたが、列島は何と「先史時代」から、ヒスイ製の高級「勾玉」を重要な交易品としていたことに、感銘したのである▼糸魚川市にある前5500〜同4000年頃の縄文遺跡からはヒスイの加工工房跡も見つかっており、青森の三内丸山遺跡の勾玉もこの工房製というから、驚きだ。


萱原(かやはら)晋のコラム(風信帖/癸隠隠毅検

どうなる、小学校低学年での「水書用筆」指導
 過日、本社の《書統》の支部長らを集めた勉強会があり、例年通り宮沢正明先生にご講演を頂いたのだが、日々子供たちを直接指導する立場の支部長らの目下の関心事はやはり「水書用筆等」のようで、質問も多かった▼もちろん宮沢先生も、「3学年から始まる毛筆を使用する書写の学習の先取りではありません」「持ち方は鉛筆と同じです」「水筆で、指先や手の柔軟な運動を体感させることが目的なのです」などと縷々ご説明下さっていたが、書塾では1、2年生も既に毛筆で書くことに慣れているだけに、「水筆は鉛筆持ちよ」などと言い聞かせても、なかなか分かってもらえそうにないという悩みも聞かれた▼書写書道学会編の新テキストでも、「弾力性のある筆記具で運筆における筆圧の変化や手指の上下動を体感させる」「硬筆での適切な運筆の習慣の定着を図ることが目的」「筆圧を一定に保って点画を書くことや、字形を整えて書くことが目的ではない」と口を酸っぱくしている▼が、今後この「水書用筆等」をめぐっては、学校現場では書塾に通っている子供といない子供の、受け止め方に差が出ることは間違いなく、書塾でも「学校の先生の言うことと違う」という反応に悩むことになるのではなかろうか。


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