(1)      (昭和51年6月7日第三種郵便物認可)美術新聞社報 平成30年(2018) 6月23日(土曜日)
  
投稿日時: 16年06月15日

 北京匡時が春のオークションを開き、3日間の売り上げ(落札総額)が日本円で400億円を超えて過去最高記録と、久々に威勢よく資料を送ってきた
 
▼同オークションも昨今はご多分に漏れず低調で、昨年も年間のトータルの売り上げが360億円という冷え込みぶりだから、1回でこれを超えたとあっては明るい表情も無理からぬ話。もっとも、書画にめっぽう強みを発揮する同社も、北京の大手美術品オークションの中では最後発

▼今年がやっと創業10周年で、今回は下見会初日の夜に、常連客はもとより全国から有力財界人や世界的コレクター、有名芸能人などを多数招待して派手なパーティーを開き、余勢をかっての開催だったから、これで彼の地のオークションが息を吹き返すと見るのは早計かも

▼そのへんの事情を窺わせるのが、今回書作品で最高額を記録した上掲の王鐸である。読者各位なら当然見覚えがあると思うが、これは6年前の2010年に同じ北京匡時の秋のオークションに日本から出品され4、536万元まで値を飛ばして話題を呼んだ、あの故村上三島氏旧蔵の作品そのものである。これが再び現れて犧2鵑虜嚢盂朖瓩範誕蠅箸覆襪△燭蠅蓮⊆膾甜埖Δ龍賚が察せられるというものである。

(書道美術新聞 第1078号1面 2016年6月15日付)


投稿日時: 16年06月01日

 全国の33の省や市・自治区にしっかりした地方組織をもつ中国書法家協会。完全なピラミッド構造でほぼ全書法界を網羅し、結集した有力書法家の数は実に1万5千名を超えるという、準国家機関ともいうべき組織である

▼この組織が、彼の国を一党支配する党の下部組織であることは今回初めて知ったのだが、そうした関係であれば、その党が文字を素材とする表現芸術である「書」の在り方の指導に乗り出すのは、不思議でもなんでもない

▼ただ、われわれとして慎重に受け止めたいと思うのは、「過去のある一時期、書法界には、完全に書法芸術の歴史と伝統に背を向けた試みが行われたことがありました。しかしそれらは、完全に伝統を放棄したといえる現象で、おそらく書法芸術の向かうべき方向ではなかった」という劉氏の発言である

▼蘇氏の談話にあった、「近年、中国の書法は少し本流から外れた動きが目立っていたように思います。一部に、書法の歴史伝統を忘れて勝手気ままに書いてよしとするような風潮も見られました」「でも、中国書法の混乱の時期はもう終わりました」という発言と劉氏の発言に通底するものについて、十分に認識しながら、今後の彼の国との交流も考えていかねばなるまい。

(書道美術新聞 第1077号1面 2016年6月1日付)


投稿日時: 16年05月15日

 蘇士澍氏は1949年、北京生まれだから、当年とって67歳の働き盛り。そして、プロフィールには常に、「満族」と付く人物である

▼少し説明しておくと、蘇氏が師と仰いだのは啓功氏で、この方は亡くなってまだ10年ほどにしかならないが、その作品は近年の北京の一流オークションで、1度など1億円を超える高値を記録したほどの超ド級の現代書法家だが、この方が実は「満族」で、蘇氏は啓功氏の猗訛△短勠瓩箸發いΔ戮関係である

▼そして、その啓功氏の姓が「愛新覚羅」だと聞けば、分かる人は誰しもあの猗畄爐遼州国皇帝甍新覚羅溥儀を想起するが、実はもっと遡れば、その血脈は「清代」を築いた満族(女真族)の王家そのもの。啓功氏は第五代雍正帝の九代目の孫という出自である

▼少々脱線したが、初めて会った頃の蘇氏はまだ40そこそこで、北京の文物出版社で、幾つかある編集部の1つの部長をしていた。この出版社は、中国政府の文化部だか国家文物局だかの直轄という名門出版社で、蘇氏はその後、副社長、社長を歴任して、全国政協の常務委員にまで上り詰め、中国書法家協会では第6次から副主席を務めてきた。「蘇主席」の実現には、日本でも歓迎ムードが高まっている。

(書道美術新聞 第1076号1面 2016年5月15日付)


投稿日時: 16年05月01日

 今回の衆議院内閣委での質疑はやはり、書壇にかなりのインパクトを与えるものだろう。本紙は実は、昨秋の段階から、ある文書の存在を耳にしていた

▼その文書は、緒方議員が質問の中で「昨年8月、私のところに投書がきました」と述べているものと同一と思われ、議員の今回の質問の根拠となっている。議員は早速その文書を内閣府と文化庁に持ち込んで確認するよう求めたという

▼議員の言っているように、文書は個人や団体が特定できる内容を含んでいるので、ここでも「今までのお礼も含め、一律10万」という集金連絡のメール、とだけ書いておくが、要するに今回の「日展問題」が起こる以前なら、ごく日常的に書壇でやりとりされていた類の文書である

▼一部墨塗りしてあるのは、提供者が特定される記述のある部分だろうが、この文書を受けて内閣府は日展に調査を求め、文化庁は「出所不明の文書」だとして「調査は控える」としたらしい

▼そのことが議員の、「ちょっと文化庁と内閣府に温度差がある」という発言の背景となっているのだろうが、ともあれ要するにこれから書壇は、徹底して「李下の冠、瓜田の沓」に徹し、こうしたことが話題にされることがないようにせねばならぬのではあるまいか。

(書道美術新聞 第1075号1面 2016年5月1日付)


投稿日時: 16年04月15日

 「王羲之…展の会場を巡りながら、かう考へた」、漱石ならさしずめこう書き出すだろうか

▼「百聞は一見に如かず」、まことに至言である。出版社の社長としては甚だ面目ないことではあるが、こと「書」については、どんなに最新の印刷技術を駆使しても猊簡広瓮譽戰襪里發里靴作れないと、しみじみ思ったのである。とにかく湧きあがって来るのは、書者の気迫であり息づかいである。写経についても例外ではなかった。むろん並んでいる作品(写経も含めて)の質が、それほどのものということなのだろうが

▼それに比べると拓本は、どんな名拓精拓でも、これなら出版社にも出る幕はありそうとも感じた。そうした意味から言えば、「孔侍中帖」もさして足は釘付けにはならず、何となくアラ探しをしているような自分に気づいたのだが、これは根っから左脳人間の筆者の犹廚すみ瓩邪魔してのことかもしれぬ

▼実は今回の「王羲之…展」では、最近はめったに出向かない「記者内覧会」に出て、わずか十数人のマスコミ関係者だけでゆっくり、という特別なもてなしにあずかったので、こんな今さらの感想を書いた次第だが、それにしても、見応えのある展覧会である。新幹線代も決して惜しくはない――。

(書道美術新聞 第1074号1面 2016年4月15日付)


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