(1)      (昭和51年6月7日第三種郵便物認可)美術新聞社報 令和年9月26日(土曜日)
  

金田石城対話集を出版へ

 西洋の近代絵画史を牽引したある高名な作家は、「画家は徹頭徹尾、キャンバスの裏の闇に隠れているべきもの」と喝破したと伝えられています▼一方、古来より「心画」と言われ、「人なり」と言われる「書」は、王羲之などの名家が輩出してその芸術性が広く認められるようになって以降、「書と人」は常に一体、密接不可分の存在として論じられて来たと言って過言ではないでしょう▼この度、美術新聞社では、長年にわたって近・現代書壇の巨匠・大家の作家論を多数執筆、出版し、またこれまでに約二〇〇人にのぼる書家との対談を重ねて来た美術評論家、金田石城氏による物故名家・現存大家約四〇人との対話を一冊にまとめた『近現代書家対談集「〇い声、□い声」』を上梓の運びとなりました▼そこには、戦後の日本書壇の、三〇〇〇年を超える「書」の歴史上に犇前絶後瓩箸気評される多彩かつ、ハイレベルの輝かしい発展をリードした名家の先生方の貴重な肉声による証言の数々。また、現書壇をリードする巨匠・大家の先生方の、書の未来を切り拓く見識豊かな貴重な肉声の数々が収められます。まさに犇前絶後瓩梁价冥犬箸覆蠅泙后ご期待下さい。(新刊案内パンフレット用のあいさつ文か
ら)


「毎日書道展」が中止に!

 四月になっても「新型コロナ禍」が収束の兆しを見せず、ついに今年の「毎日書道展」の中止が決まった▼作品の搬入日までにすでに一カ月を切った今、外出自粛要請でどこの会でも作品指導が大幅に遅れていると言われる状況下では、この苦渋の決断は十分理解できる。読売書法展は幸い会期が一カ月以上後なので、まだ可能性は残されているが、もし万々が一、この両展が共に開かれないという事態となったら、書道界は果たしてどれほどの打撃を受けることだろう▼それはいわば、戦後に始まった日本書道界の発展・繁栄を支え、牽引してきた頼みのメカが、まさかのエンストに追い込まれたような事態であり、この空白期間がどのような結果をもたらすか、斯界の先生方には、十分予想できるところだろう▼そうしたなか、武道館から同館の競書誌『書写書道』の五月号を休刊するという連絡が届いた。だが調べてみると、これは半官半民的な同館ならではの決定で、他には減ページするところはあっても休刊の動きは広がっていないようだ。競書誌も、書道界にビルトインされた重要メカだから、美術新聞社も刊行を堅持する方針を固めている▼暗い世相に明るさをと、本号の一面はこんな紙面(「おいしい浮世絵展」開催)にしてみた----。


「コロナ禍」で、書道界の危機!

「新型コロナ禍」は、書道界に深刻な後遺症を残す可能性が強まってきた。この問題、高齢会員に対する減免、特別料金設定といった、書壇と関係業界が結束しての、思い切った対策が必要かも知れない。それでも、先は見通せないと思わざるを得ない▼例年なら桜の話題でもちきりとなるこの時期は、全国の各会・教室では夏の公募展へ向けての作品の準備に入り始める頃だろうが、ある有力書壇指導者の話では今年は高齢会員を中心に「暫く、教室をお休みさせてください」「今年の出品も、お休みにさせて頂いてよろしいですか」という連絡が相次いでいるとか▼従って、今年の各展の出品数が相当程度落ち込むのはやむを得ないとしても、「問題はその先」と、その指導者はいう。つまり、多くの高齢会員がこれを機に書道をやめてしまうか、書道はやめないにしても、公募展出品に付いて来なくなる心配があるのだ。高齢会員の多くは先生が励まし、励ましして付いて来ている人も多い。「みんなと一緒」だから頑張って来た人が、みんなと一緒にリタイアしてしまう事態が、現実味を帯びてきているのだ▼ともあれ、今はとにかく一人ひとりが慎重に身を処す以外にないのだから、まさに「人間が試されている」時----。


井島勉先生を京都市美に訪ねたこと

 京都市美術館の記事を書いていたら、かつて(一九七四年)同館の館長室に井島勉先生を訪ねてインタビューをした時のことを思い出した▼当時も片手間で美術の新聞の編集をやっていたので、その紙面で「美を語る‐あるす・ろんが」というインタビューコーナーを設け、気になる方を片端から訪ね歩いていたのである。井島先生の前は建築家の谷口吉郎、その前は写真家土門拳、井島先生の後は陶芸家小山富士夫、その後は常盤山文庫の菅原通済という贅沢さで、それは勉強になった▼井島先生は言うまでもなく西洋美学・芸術史の大家で、二年前に京大を定年退官され、同館の館長をお務めになっていた。当時私は駆け出しの大学講師。美学・美術史の講義には先生の著書を教科書に使わせて頂いていたので、かなり専門的なお話を聞かせて頂いたのだが、「館長として、今の美術界にどんなご感想を」と伺ったところ、とたんに口調が厳しくなった▼「美術評論家が特定の物差しを持ってモノをいうことは、単に彼の個人的事情」「そんな言説は我々の美に寄せる願いや共鳴のためには全く無用」と一刀両断。そして、「一部にそうした評論家の物差しに媚びるような作品を作っている作家もなしとしない。残念だ」とも----。


別冊付録『美文字だ!練習帳』が人気! 

 文字文化協の機関誌『文字だ!』(第41号)が「美文字だ!練習帳」と銘打った別冊付録をつけたところ、予想外の手応えでビックリ!▼ある程度反響はありそうと考えて朝日と読売に出版広告を打ったので、お気づきだった方も多いと思うが、この出稿を取り扱った広告代理店の担当者が驚いているほどだから、確かに予想外といっていいだろう。そしてこのことは、猜源離れ瓩叫ばれている時代でも、「美しい字を書きたい」と思っている人は少なくないという証左の一つと見れば、これほど心強いことはないと言えよう▼と、ここで有頂天になる前に、実はもう一つの犹実瓩鯤鷙陲靴覆韻譴个覆蕕覆ぁそれは何かというと、「新聞広告を見た」といって注文電話を掛けて来た人々の年代に、これまた予想外の片寄りが見られたことである。なんと、「六十代はまだ少なく、大半は七十代から、八十代。九十近い人も少なくなかった」とは協会事務局の話で、「ほんと、若い世代はほとんどいなかった」とも▼これは、若い世代が「美文字」に関心がないというのではなく、それほど若い世代が新聞を読まなくなっているという爛如璽伸瓩噺て、今後の若者層へのアプローチの仕方を考えねば、という話なのである。


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