小学低学年に猝喇授業

掲載日: 15年02月15日 | カテゴリ: トップ記事

大杉第2小での犖開授業疉景全書研部会、検証実験
指導要領 改訂視野
筆ペン・水書き、効果クッキリ


 書写・書道教育界最大の教研組織、全書研(全日本書写書道教育研究会=長野秀章理事長)では本年度(26年度)から、内部に校種別の「特別研究委員会」を設けて次期学習指導要領改訂をにらんだ書写・書道教育の改善をめざす取り組みをスタートさせている。その一環として同委・小学校部会が目下実施している、小学校低学年に「軟筆」(毛筆)による指導を取り入れることの是否をめぐる実験授業が先頃、全日本書道連盟等の関係者に公開されたことから、書道界・書塾界でも関心が高まっている。
 ◇ ◇ ◇水筆と水書用紙筆ペンで水書きを体験する児童同上

 同部会による授業研究は、主に東京と関西などの同部会に所属する委員の勤務校の一部で行われているもので、東京では江戸川、葛飾の両区の各2校、合わせて4校の公立小で実施され、各校とも既に本年度予定していた10回の実験授業を全て終えて、現在その結果について報告書を出す準備を進めているという。


 もっとも、同部会による今回の授業研究は、あくまでも小学校書写において毛筆を使用する指導の原則的位置づけである「硬筆による書写の能力の基礎を養うこと」を主眼としたものであることから、書道界・書塾界などが今回の動きに軽々に色めき立つことは、避けたいところだ。


 実際、実験授業が公開された東京・江戸川区の同区立大杉第二小学校(土*1上智子校長)での授業(小1、小2)でも、児童らが使用した用具は筆ペンと水書(みずがき)用紙で、その筆ペンも元来は水彩絵具用の「水筆(みずふで)」として市販されているもの。毛筆代用品としての筆ペンとは全くの別物である。そして同用紙に、墨液に代えて水で書いた線は、1分余りで跡形もなく消えるため繰り返し練習にも効果的であり、この筆ペンによる指導はあくまでも鉛筆の持ち方の会得や矯正のための練習過程と位置づけられていた。(*1=「土」は、土の右肩にヽ)

 従って、同授業(10回)での筆ペンによる学習では一切評価は行われず、達成度評価は全て硬筆(鉛筆)による課題学習に対して行われていた。


 また、この筆ペンという「軟筆」は、鉛筆よりも格段に扱いやすく、力を入れずに線が書けることから筆圧の矯正にも効果がありそうと考えられているらしいが、今回は筆圧については系統的な検証はしない方針という。
 同公開授業における、「筆ペンによる水書き」を活用した学習の「目的」として設定されたのは、第1学年が―饂活動を行う際の手指の基本的な動きを身に付けさせる鉛筆の持ち方、姿勢、筆圧の矯正。また第2学年では、―饂活動を行う前の手指のウォーミングアップとして鉛筆の持ち方、姿勢、筆圧の矯正B茖崖愬から扱う太筆の毛筆への円滑な継続のため、となっていたが、これは現行の学習指導要領に即した授業の中でもその狙いが明確に見て取れて、分かりやすい設定といえるだろう。


 そして今回、各校で研究授業を担当した教員らからは、次のような感想が寄せられているという。
▽水書きでは「とめ・はね・はらい」の筆使いがはっきりするので指導に効果的、▽児童らは当初は興奮気味に飛びついたが、慣れてくると「めあて」をよく理解して集中して取り組む者が増えた、▽水書きによる学習では、授業時間の中で顕著な差を見せる児童が多く見られた、▽自分自身でも「めあて」の達成感があるようで、振り返りの時間を楽しみにする児童が多い、▽時間中の私語がなくなった、▽「始筆」「終筆」を意識する児童が増えた、▽硬筆のみでは、45分間集中力を持続させることが難しいが、水書きと交互に学習させることで飽きさせずに授業ができる――。


 これらの感想からも、今回の実験で現場教員らが大きな手応えを感じていることが窺われよう。また、この「軟筆」(筆ペン)による指導を第1学年と第2学年に実施した比較では、第1学年のほうが格段に効果が大きく、第2学年から始めたのでは遅いという結論になりそうだともいう。
 なお全書研では、今回の結果を踏まえて、来年度以降この研究を、筆ペンによる水書きだけでなく小筆や一般的な筆ペンの使用も視野にさらに全国的な規模で行っていく方針といい、こうした研究と検証の結果がもし次の学習指導要領改訂においてプラスに反映することになるとすれば、昭和43年(1968)の改訂で「毛筆」が初めて小学校3学年の「書写」に位置づけられてからちょうど半世紀の節目に、書写・書道教育に新時代を画するものと期待される。



(書道美術新聞 第1047号1面 2015年2月15日付)



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