「“標準草書”の歩み」展

掲載日: 14年03月15日 | カテゴリ: トップ記事

于右任書「標準草書千字文」(部分)「于右任展」に併催へ
東京・池袋で4月23日開幕
文字生活の効率化に一石



 美術新聞社は目下、台湾政府の関係部局などと協力して、20世紀の大陸で孫文に従って「中華民国」の建国に大きな役割を担うとともに、晩年の戦後は台湾政府の中枢にある一方で書家としても顕著な足跡を残し、中国・台湾の書法界では“当代の草聖”と謳われる于右任(う・ゆうじん)の「逝世50周年記念回顧展」(4月23日−28日、於東京芸術劇場展示ギャラリー)の開催準備を進めているが、このほどこれに合わせて急きょ、同会期・同会場で「“標準草書”の歩み」展(仮称)を併催する方針を固めた。
 
 本社はこれにより、わが国では理解と評価の立ち遅れが指摘される于右任が創始した「標準草書」に対する再認識、再評価のキッカケにしたい考えだ。
 ◇ ◇ ◇于右任が古の各名家から集字した「標準草書千字文」(『墨』誌・第62号1986年9.10月号)より転載


 近年、中国政府の教育部(文部省に当たる)がいわゆる「簡体字」政策を見直し「繁体字」に回帰する方向転換に踏み切ったともとれる、中国全土での学校教育における文字指導の方法と内容の変更を教育現場に指示して注目されているが、この3月5日に開幕した中国の国会に当たる今年の全国人民代表大会(全人代)でも、発言者のレベルはそう高くはないものの、
 「伝統文化の継承や、国際文化交流の円滑化のためにも、簡体字を廃止して繁体字に戻すべきだ」
 とする“提議”が行われたことが、中国内外で大きなニュースとなっている。
 
 
 “漢字の本家”中国では、20世紀初頭の清朝末期から早くも、活発化した教育現場での文字教育の負担軽減や国民の日常の文字使用のスピードアップなどを図る狙いの「減省漢字筆画的提議」(漢字の筆画を減少させる提案)の主旨に沿った漢字字体の簡略化の研究と試行が重ねられてきた。
 
 そうした20世紀前半から、戦後に大陸で中国共産党政権が誕生するに及んで一気に取り組みが加速し、いわゆる「簡化字政策」が急進的に推進されてきた経緯とその結果については、中国でもかねてより多くの識者が見直しを提言してきた。
 
 そしてその結果として、現行からさらに一段の簡略化を進めようとした計画が、中止されたこともよく知られているところだから、ここへきて従来の一連の取り組みに大きな反省の機運が生まれ始めているのは、十分妥当なことといえるだろう。
 
 
 とはいえ、この見直しの機運が今後実際にどのような展開を見せるのか、果たしてスムーズにことが運ぶのかについては、問題が単に中国国内だけのことではなく、広く漢字文化圏全体を巻き込んだものとなることは必定であることを考えると、われわれとしても十分慎重に動向を見極める必要がありそうに思う。
 
 
 そしてそうした中で、この問題を考える際に見落とすことのできない存在として近年、台湾などでも改めて再評価の機運が高まりつつあるのが20世紀中葉に于右任が残した仕事であり、われわれ日本人としても、この動きに同調して于右任に改めて目を向けるのも、意義のあることではなかろうか――。
 
 これが、ここへきて美術新聞社が、于右任を積極的に取り上げようとしている本意である。
 
 
 むろんこの21世紀の日本で、于右任の考えとその残した仕事をどう位置づけ、どう評価するべきかは、容易に結論の出せる問題ではなかろうとは思われる。
 
 しかし、時代が大きく動きつつあった1930年代の大陸で、同志を糾合して「標準草書社」を興し、新時代における文字生活の効率化を、あの荒っぽい機械的な字体の簡略化ではなく、古来より多くの先人たちによってさまざまに試みられ、積み重ねられてきた「草書書体」を整理し標準化して進めようとしたのが、于右任である。
 
 それゆえ、読みやすく、書きやすく、正確で、美しいという4要素を備えた規範性のある草書書体、いわゆる「標準草書」の創成に取り組んだ情熱の軌跡が、「標準草書社」結成以後の于右任の残した書家としての顕著な仕事であることを思えば、仕事の結果の当否はさておくとしても、于右任という存在にわれわれはもっと関心と理解を深めるべきだろうと思わずにいられないのである。
 
 
 今春の東京での「“標準草書”の歩み」展(仮称)に、ぜひご期待頂きたいと思う。
 
 
 本展に関する問い合わせ等は、03−3462−5251、FAX03−3464−8521の美術新聞社・于右任展係へ。



(書道美術新聞 第1026号1面 2014年3月15日付)



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