《緊急紙上シンポ》“書道教員養成”は今

掲載日: 13年10月01日 | カテゴリ: トップ記事

文科省が新方針「書道」消滅の危機も
「改革」迫られる国立大・教員養成学部



 本紙の姉妹誌《千書万香》13号の「誌上ブログ」欄に載った故鶴田一雄・新潟大教授の「国立大学の教員養成学部の動向について」と題する記事が、「鶴田先生の遺言だ」と、波紋を呼んでいる。
 
 同記事は、鶴田氏本人から最終締め切り日を一日過ぎた8月23日に、「国立大学の教員養成学部から書道がなくなるのではとの危機感から文章を書きました。間に合えば採用して下さい」と、FAXで送られてきたもので、編集部では内容の重要性からむろん、直ちに掲載を決め作業を開始して9月1日付で同号は発行の運びとなったのだが、それから間もない9月19日に氏の訃報に接したことは、日刊紙等でも報じられた通りである。
 そして、氏はご自身が胃がんであることをご存じだったと聞くから、まさに「遺言」というべきものと思わずにいられない。 

 そこで本紙では、この問題に関する認識を書道界共有のものとすべく、ここに氏のご寄稿記事を再掲するとともに、兵庫教育大の小竹光夫教授と、佐賀大の竹之内裕章名誉教授にも「コメント」の形でご参加願い、「緊急紙上シンポ」と銘打ってみた。
 このほかにも多くの専門家にコメントを頂いているので、次号以降の記事に反映したい。
 
 読者各位も、ぜひご意見をお寄せ頂きたい。(本紙2面に関連記事)
 ◇ ◇ ◇


「国立大学の教員養成学部の動向について」 鶴田一雄 

 昨年来、国立大学の教員養成学部は、文科省から「ミッションの再定義」と称する改革を迫られている。
 その背景には、昨年の民主党から自民党への政権交代で、自民党の教育再生会議から提案される改革案に、文科省が気を遣ってのことのようである。
 
 
 その改革案の主なものは、1)学び続ける教師像、2)ICT機器を使った授業の展開、3)教師の高度化を図るために教職大学院を積極的に新設、4)地元の教育委員会と連携して質の高い教員養成を目指す、などである。
 また文科省からは、従来のいわゆる「新課程」は廃止せよとの指示もあった。
 教職大学院については、昨年11月末の段階で設置は教員養成系の学部等をもつ全国44国立大中の19校に過ぎないので文科省も必死のようで、本年6月に開催された国立大学協会の会議で文科省の高等教育局長は、「教職大学院を作る大学には人件費などの予算をつけるが、そうではない大学には予算をつけない」とまで表明した。
 
 
 しかし、われわれにとっては、「新課程」の廃止の方が重大問題である。
 本学では15年前に、国の政策に沿って少子化に対応すべく、教員養成の学生定員を削減した。
 その際に、学部名称を「教育学部」から「教育人間科学部」に変更し、教員養成課程の他に4つの「新課程」を設置したのであった。
 それは、生活科学課程、学習社会ネット課程、健康スポーツ科学課程、芸術環境創造課程であり、われわれ書道教員は音楽表現、造形表現、書表現の各コースから成る芸術環境創造課程に所属している。
 だがその後、平成20年に学部名称を教育学部に戻し、再び教員養成も重視するようになった。


 一方の「新課程」は、15年間に各課程独自の活動を展開し、国際交流や地域に密着した芸術活動などを積極的に行ってきた。
 これらの活動は、従来の教員養成だけの取り組みでは成し得なかった成果である。
 もっとも、地域密着型のパフォーマンスや国際交流に特化したことで、教員養成に対する取り組みは十分だったか、という反省もないではない。
 
 
 今後、「新課程」をどのように改革すべきか、各大学とも工夫のしどころである。
 そしてこのままでは、国立大学の教員養成学部から「書道」が消滅するのではないかと、危機感も抱いている。


鶴田一雄氏(つるた・かずお=新潟大学教授、書学書道史学会理事)胃がんのため9月19日死去。61歳。




(書道美術新聞 第1015号1面 2013年10月1日付)



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