「古筆手鑑」展

掲載日: 12年02月15日 | カテゴリ: トップ記事

同展ポスター手鑑名品7件等、一堂
2月25日 東京・出光美術館で開幕


 「古筆手鑑」展が2月25日、東京の出光美術館で開幕する(3月25日まで)。
 
 同展は、同館蔵の古筆手鑑(てかがみ)「見努世友」と京都国立博物館蔵の同じく「藻塩草」(いずれも国宝)を中心とするもので、古筆手鑑計7件と、「継色紙」、「中務集」、「倭漢朗詠抄」(巻下)などの古筆切名品を合わせて、約30件の古筆作品を一堂にする企画展。
 
 今回の企画で特に注目されるのは、「見努世友」で表裏全229葉中の134葉、「藻塩草」で同242葉中の84葉を、前・後期で表・裏を返して展示するという点で、古筆ファンはどうしても2度足を運ぶ必要がありそうだ。
 ◇ ◇ ◇
 現在、国宝指定されている古筆手鑑は、上記の2件のほかには、陽明文庫蔵の「大手鑑」と、MOA美術館蔵の「翰墨城」のみ。
 
 また、重文指定品として逸翁美術館蔵の「谷水帖(たにみずじょう)」が知られるが、今回はこの「谷水帖」も出品予定で、他に出光美術館蔵の「濱千鳥」、「墨宝」、「聯珠筆林」と、個人蔵の「はまちどり」の計4件も予定されている。
 
 
 古筆は書的には、平安〜鎌倉期のかな書蹟の名品を指す概念で、多くは元は冊子や巻子の形状だったものが、室町期以降、茶の湯の掛物としての需要が高まったことなどもあり、切断され「断簡」となったものが少なくない。
 
 こうした断簡を「古筆切」と呼び、掛物として軸装され茶室などで調度・鑑賞用に珍重されたが、江戸時代に入ると、保存管理や鑑賞の便のために古筆切を貼り込んだ帖を作る風潮が興った。
 
 
 それとともに、真贋鑑定の需要も高まり古筆の鑑定を家職とする「古筆家」の創設をみるが、「見努世友(みぬよのとも)」と「藻塩草(もしおぐさ)」はいずれも、その古筆家が鑑定の際に参照して基準とする「台帳」として製作されたものとされ、それだけに名品揃いで、当時の古筆に対する判断基準などを窺わせるものともなっている。
 
 
 こうした名品手鑑は、雲母(きら)を引いた台紙に天皇、親王、歌人、武家、女性、僧などの筆跡、または古写経が貼り込まれているが、その貼付順序は定式化されていて、まず伝聖武天皇「大聖武(賢愚経)」が巻頭に貼り込まれているのが通例。
 
 また各古筆切の右上には、古筆鑑定家による「極札」が添えられている。
 
 
 「見努世友」も、伝聖武天皇「大聖武」に始まり、伝後鳥羽天皇「月輪色紙」、伏見天皇「筑後切 拾遺和歌集」、伝紀貫之「高野切第三種」、伝藤原公任「堺色紙」などの名品計229葉の古筆切が、一方の「藻塩草」も同じく「大聖武」に始まり、伝紀貫之「高野切第二種」、伝藤原伊経「尼子切」、伝亀山天皇「金剛院切」など計242葉が貼り込まれている。
 
 「見努世友」の名は、徒然草に「古人の書に接することは見ぬ世の人を友とする思いがする」とあることに由来するという。
 
 
 手鑑は1冊の書物として、紙をZ字型に折った体裁で製本した「折本装」で作られているため、書物を展開すると、蛇腹状につながった表面が連続する。
 
 通常の展観では、このうち2葉または数葉程度が展示されるのが普通で、今回のような規模で展開して展示するのは極めて異例。
 
 
 ただ、「見努世友」と「藻塩草」はいずれも表裏にわたって古筆切が貼り込まれていることから、両面の同時展示は困難で、今回展では、「見努世友」は「表面」を2月25日から2月11日までの前期、「裏面」を3月13日から25日までの後期に展示、「藻塩草」は「表面」を後期、「裏面」を前期に展示するという。
 
 他の手鑑は表面のみに貼付されているため、展示替えは行われない。
 
 
 なお近代には、有力コレクターが自ら収集した古筆切に伝来の手鑑から抜粋した名品を加えて新たな手鑑に仕立てることも行われた。
 
 三井財閥を支えた実業家で茶人としても知られた益田鈍翁によって製作された「谷水帖」はその例で、伝小野道風「本阿弥切」、伝藤原公任「石山切伊勢集」などの平安古筆の名品のみによって構成されている。
 
 今回展では、こうした手鑑の狄卦貳羈哭瓩皸譴弔慮どころとなりそうだ。
 
 
 問い合わせ等は、筍娃魁檻毅沓沓掘檻牽僑娃阿療戸会案内サービスへ。

◆「古筆手鑑」展、主な出品一覧

▽古筆手鑑「見努世友」(国宝)、古筆手鑑「藻塩草」(国宝)、古筆手鑑「谷水帖」(重文)、古筆手鑑「濱千鳥」、古筆手鑑「墨宝」、古筆手鑑「聯珠筆林」、古筆手鑑「はまちどり」、伝紀貫之「高野切第一種」(重美)、伏見天皇「筑後切・後撰和歌集」(重美)、伝小野道風・継色紙「むめがかを」(重文)、伝小野道風・継色紙「あめにより」(重美)、伝西行「中務集」(重文)、藤原定家「定頼集」(重文)、伝藤原行成「倭漢朗詠抄・巻下」(重文)、伝源俊頼「東大寺切」(重美)、伏見天皇「広沢切」(重文)、ほか



(書道美術新聞 第978号1面 2012年2月15日付)



kayahara.com : 萱原書房・美術新聞社のサイトにて更に多くのニュース記事をよむことができます
http://kayahara.com

このニュース記事が掲載されているURL:
http://kayahara.com/modules/bulletin/index.php?page=article&storyid=238