「レジャー白書’10」の”怪”

掲載日: 10年08月01日 | カテゴリ: 書道美術新聞【1面】

書道の参加率“倍増”
日本生産性本部刊
「ネット調査」に変更で


 日本生産性本部(財団法人:谷口恒明理事長)は今年も、『レジャー白書’10 』(第34号)を発表した。
 
 同白書については、かつて旧通商産業省所管の余暇開発センターが調査主体だった時代以降、既に20余年にわたって本紙が毎年「書道人口」を推計し報道する際の基礎資料に用いてきた経緯があるが、今年の白書では「調査方法」を同白書の長年の「質問留置法」から「インターネット調査」に切り換えたことが判明。
 
 これにより同白書は、調査データの信頼度だけでなく、従来データとの一貫性が大きく損なわれたことから、美術新聞社は長年続けてきた「書道人口」推計報道の中止を決めた。
 ◇ ◇ ◇


 「書道人口」推計中止へ
 
 『レジャー白書』が、スタート以来30余年にわたり採用してきた「質問留置法」(調査対象者に質問票を届けて、後日回収する方法)による調査は、この種の世論調査、動向調査の王道ともいうべき手法で、さらにサンプリングでも住民基本台帳を利用した「無作為抽出法」を用いてきたことから、統計学的にも信頼性の高い調査として、各方面で利用されてきた。
 
 
 しかし今回、同白書が採用した「インターネット調査」の手法は、調査対象が当然パソコンを利用している人に限られてしまい、しかも対象が「モニター登録者」(今回は130万人という)に限定された結果、今回の白書のデータは昨年までの従来のデータと接続して同等に扱うには不向きの、統計的価値も極めて低いものとなったといわざるを得ない。
 
 
 白書でもこの間の事情については「調査手法変更による影響」として、「従来の訪問留置調査に比べ、全般に参加率が若干高めに出ている傾向が見られる」としているが、若干どころか種目(写真やビデオの制作、陶芸など)によっては参加率が従来比三倍前後にも達し、書道でも二倍という極端なデータとなっており、このへんはパソコン利用者層に固有の傾向が表れたとも見られそうだ。
 
 
 ちなみに、今回の白書から書道の2009年の「参加人口」をはじきだして従来のデータと突き合わせてみると、
▽90年代前半 710万人
▽90年代後半 620万人
▽00年代前半 500万人
▽00年代後半 370万人
▽2008年  360万人
▽2009年  660万人

 となり、参加人口は前年までの傾向からほぼ倍増し、過去20年間の落ち込み幅を一気に回復したことになる。
 
 また「参加予備軍」を意味するといえる「参加希望率」を含めて算出した人口を広義の狃馥賛邑″と捉えてきた従来データに、今回調査ではじき出された「経験者の潜在需要」160万人、「未経験者の潜在需要」290万人を参加人口と合計して今回調査による「書道人口」を試算してみると、昨年の807万人から約300万人増えて1110万人となる。
 
 これは実に約4割増という“明るい数字”ではあるが、この数字を手放しで受け入れる向きは、書道界にはいそうもない。
 
 
 ところで、上表からその他の傾向を読み解いてみると、ほぼすべての種目で「活動回数」の減少が見られ(さすがにパソコンは例外)、費用についても多くの種目で減少傾向が目に付く。
 
 たとえば、文芸の創作、ビデオの制作・編集や日曜大工、美術鑑賞などは特に落ち込みが目立ち、書道についても、回数では年間約30回が約17回に、費用も約3万4千円が約2万3千円となっており、もしこのデータがこの先、さらにパソコンの普及が進んでいくと、書道界もこのような影響を受けることを予言しているのだとすると、それなりに深刻なデータといえるわけである。



(書道美術新聞 第943号1面 2010年8月1日付)



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