(1)      (昭和51年6月7日第三種郵便物認可)美術新聞社報 平成29年(2017) 11月22日(水曜日)
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《台北故宮》神品至宝展 6月24日東博で開幕
掲載日: 14年03月01日

出品作中の目玉中の目玉、北宋・蘇軾「行書黄州寒食詩巻」(11世紀)=展示期間8/5〜9/15=清朝の乾隆帝がこよなく愛した名品で、右端に押された乾隆帝印も今回展の出品作に含まれている門外不出の名品が
“初の日本展”
「寒食帖」も、「書譜」も
「定武蘭亭」は九博のみ
“日本文化の源泉”見る



 中国歴代の文物・美術品のコレクションでは世界屈指と定評ある台湾・故宮博物院の各ジャンルの代表的名品を選りすぐって一堂にする日本では初めての「特別展・台北故宮博物院/神品至宝」が6月に東京で実現の運びとなり、このほど行われた主宰側による報道機関向けの記者発表会で同展の概要が公表された。

 ◇ ◇ ◇唐・孫過庭「草書書譜巻」部分

 それによると、今回の展示品の総数は、東京国立博物館(東博)と、巡回展が予定されている九州国立博物館(九博)の、それぞれ展示期間が限定されている展示品まで合わせると計231件に及ぶ大規模なものとなり、特に中国書道史を彩る書蹟や、銘文で名高い青銅器、また一部の絵画など、全体の3分の1は書道関係者必見の作品群といえ、書道界にとっては本年最大の見ものとなりそう。
 
 なお、同展の会期・会場は、6月24日から9月15日までが東博・平成館、引き続いて太宰府市の九博で10月7日から11月30日まで開催の予定となっている。
 
 以下に、記者発表会での銭谷真美・東博館長、三輪嘉六・九博館長、それに富田淳・東博課長のコメントを、それぞれ編集部で抄録してお届けする。(※文末に筆墨書蹟関連の出品予定目録を掲載)
 
 ◇

【銭谷真美・東京国立博物館長】
 このたび、特別展「台北国立故宮博物院‐神品至宝」展を、東京国立博物館と九州国立博物館の両館で開催する運びとなりました。
 中華文明の精華が結集する台北故宮博物院の名品を、我が国で広く紹介できることは、誠に喜びに堪えないところです。


 日本で最も古い歴史を持つ東京国立博物館では、これまでも様々な特別展を行って参りました。
 しかし、これまで実現できなかったのが、この展覧会です。
 歴史や文化に関心を持つ、多くの人々の長年の夢が、アジアで初めての「故宮博物院展」として、実現する運びとなりました。
 
 
 本展覧会は、故宮博物院の中国歴代にわたる優れた収蔵品の中から、特に代表的な作品を厳選し、中国文化の特質や素晴らしさを、広くご観覧頂こうとするものであります。
 特に、故宮博物院の特別のご厚意により、これまで門外不出であった名品「翠玉白菜」を東京国立博物館に、「肉形石」を九州国立博物館に、それぞれ2週間の期間限定でご出品頂くことになりました。
 友好の証として、これは誠に特筆すべき出来事だと思っております。
 
 
 さらに、2016年、新たに開館予定の故宮博物院・南分院に、東京国立博物館、九州国立博物館から150件に及ぶ日本美術の優品の数々を出品し、展覧会を行うことと致しております。
 海外展としては過去に例を見ない、最高水準の代表作によって構成をされます日本美術展の開催により、今後ますます双方の友好が深まることを心から祈念致しております。

 ◇

【三輪嘉六・九州国立博物館長】
 私の方からは、九州の事情、九州国立博物館の状況についてご説明致します。
 私どもは国立四博物館の中で一番新しい博物館です。
正確には2005年の10月に開館致し、来年は開館10年を迎えます。


 博物館の持つコンセプトを少しご説明致しますと、九州という地域にあることもあり、アジアとの関係をしっかりと見つめ、日本文化の源泉をアジア史の視点で見る、ということです。
 これを元に今まで幾つかの展覧会を実施して参りましたが、この度の台北故宮博物院の収蔵品によるこの展覧会はまさに「アジアを見る」という点で、私どもの博物館としては正にコンセプトの一致を見るところでもあります。
 
 
 そして同時に、九州の地域は、皆さん方もご存じの通り、台湾との交流の豊かなところでもあります。
 これは文化面はもちろん、産業、経済の面でも本当に濃いものがあります。
 この展覧会が九州で開催されるという点で、九州の全ての方々が心から期待をし、応援をして頂いている、そんな状態の中での開催となります。

 ◇

【富田 淳・東博学芸研究部列品管理課長】
「神品至宝」と名付けました、台北の国立故宮博物院の展覧会がいよいよ開幕となります。


 69万点にも及ぶ中華文化の結晶といってもよい数々の名品の中から、我々担当者が選りに選りすぐって選びました231件。
 そのうち、東博では180件余りが、九博では110件ほどが、皆様の目の前にその姿を現します。
 かねてより報道されております中には、「白菜」「肉」、2つの門外不出の作品が含まれており、いずれも開幕直後の2週間、期間限定での公開となります。
 
 
 「白菜」について、1つだけコメントを付けさせて頂きます。
 キャッチコピーにもありますように、「素材の美と至高の技が織りなす究極の神品」です。
 まず素材の美ですが、これはヒスイ、玉を削って作り出しております。
 身に着ける宝飾品として見ますと、素材としては劣るものです。
 それは下の白い部分に夾雑物による黄ばみが少しあります。
 これは作者が敢えてこの夾雑物のある素材を選んでいるのです。
 黄ばみを用いて傷みを表現した迫真の存在感をもつ、故宮でも絶大な人気を誇っている名品です。
 
 
 今回出品されます231件は、いずれをとってみても、知れば知るほど、見れば見るほど、目からウロコ、感動、感激の連続であります。
 学芸部の担当サイドから申しますと、「白菜」や「肉」だけを強調して宣伝されるのも内心忸怩(じくじ)たるものがあり、この2点を仮に除いても、本当に素晴らしい作品が勢揃いします。
 
 
 今回展は、全体を3章に分けるとともに、その導入部としての序章を「皇帝コレクションの渕源」と題し、そして第1章を「中国士大夫(したいふ)の精神」、第2章を「天と人との競合」、第3章を「中国伝統文化の再編」と題しております。
 
 
 故宮のコレクションは、北宋から南宋、元、明、清に至る歴代の皇帝コレクションといわれておりますが、皇帝らが収集したコレクションですので、唐時代以前の古い作品も多数含まれています。
 
 
 導入部の序章では、故宮博物院の収蔵品の中でも、かなり古い時代に属する作品を紹介します。
 最も古いものでは、新石器時代や、殷・周時代に作られた量器や青銅器といったものがございます。
 当時の統治者は、様々な祭祀を通して神と交信し、神権的な支配を行うようになったと考えられ、美しい玉器や青銅器はその祭祀には欠かせない重要な宝物であり、玉器や青銅器を所有していることが、天命を受け、王位に就いた君権の正統性を示し、権力や財力を象徴する大切な宝物であったというわけです。
 
 
 第1章「中国士大夫の精神」では、宋、元時代の書画を中心に展示します。
 唐時代までの貴族文化に代わり、宋時代になると科挙の試験を目指して豊かな教養を身につけた士大夫が、社会の中心となって活躍します。
 そして、士大夫たちが芸術、文化をも導くという状況になります。
 
 
 今回展では、北宋の4大家、例えば蔡襄、蘇軾、黄庭堅、米芾といった名家の書の数々や、宋時代の様々な名画をお出しして参ります。
 そして金時代の「赤壁図巻」では、北宋の流れを受け継ぐ人と悠久の自然が結合した名品を、「元時代の宇宙を表現した崇高な山水」と銘打った「雲横秀嶺図軸」などを、ご紹介します。
 そして同時に、士大夫たちは政争に巻き込まれながら左遷され、また様々な作品を作り上げて行く、そして北宋最後の皇帝、徽宗がやはり芸術文化を愛好し、様々なコレクションを築き上げ、当時の芸術文化を導いて行きます。
 そのあたりも、コーナーを設けてご紹介する予定です。
 
 
 そして徽宗皇帝が愛した汝窯の作品「水仙盆」、これは作品を目の前にしてじっくりとご覧頂きたいと考えております。
 本物を見ないと分からない、オーラが出ておりますので、ぜひ楽しんで頂きたいと思います。
 
 
 第2章「天と人との競合」では、元・明・清の工芸品を中心に、ご紹介します。
 朱元璋によって新しい明王朝、漢民族の王朝が建てられ、また様々な商品経済の発展に伴い、芸術分野においても新たな発展をみます。
 明のごく初めの頃は力がないのですが、特筆すべきは、その後鄭和が七回に及ぶ大航海を成功させます。
 これにより中東の文化、また素材を手に入れるようになります。
 
 
 例えば、景徳鎮窯の「青花龍文大瓶」は、今までは手に入らなかった新しい素材を入手し、輝くばかりの美しさを出すことに成功した陶磁を象徴する作品の1つです。
 また、何ミクロンという薄さのウルシの層を何度も塗り重ねたものに彫刻を施した「双龍彫彩漆長方盆」などは、官営の工房がいくつも出来て、財力を度外視し、たっぷり時間を掛けて素晴らしい作品を作っていった一例であり、また民間でも地方に根ざした素晴らしい作品が作られるており、そのあたりをご紹介していこうと思います。
 
 
 最後の第3章「中国伝統文化の再編」では、清朝に光を当て、清朝の歴代皇帝、特に乾隆帝がどのようなことをやろうとしたのか、その辺りの奥深いところをご紹介していければと考えています。
 
 
 宋・元・明・清のコレクションが故宮博物院に継承されていると申しましたが、考えてみますと、宋、元、清は異民族が非常に伸張した時代でした。
 北宋も金に追われて南へ逃れ、元時代はモンゴル人が、清時代は満州族が建てた国でした。
 そういう意味で改めて考えますと、何が正統で何が異端なのか、本当に複雑な思いが致します。
 そういう状況下で、少数民族といってよいほどの人数しか居ない異民族であった満州族が、何億、何十億という漢民族を支配した清時代は、実は美術品も国を支配するための手段として使われた時代でした。
 
 
 唐時代の孫過庭「草書書譜巻」、これは乾隆帝が愛好したコレクションの1つで、先ほど申しました徽宗皇帝の収蔵印がありますが、これにあたかも対抗するかのように、乾隆帝が自分の印を押しているというものです。
 また今回、スターの1人として紹介したい蘇軾、蘇東坡ですが、例の「肉形石」のトンポーローの調理法を発明したといわれている人物です。
 その蘇軾の名品中の名品といわれる「行書黄州寒食詩巻」は、実は非常に早い時期に、日本にプライベートといいましょうか、密かに運ばれたことがあります。
 しかし日本人が買えず、その後に故宮が収蔵したというエピソードがあります。
 今回の展覧会では、やはり名品を出して欲しいとお願いをし、まず最初に許可を頂いたのがこの作品でした。
 その理由は、先ほど申した日本にゆかりのある作品だからです。
 
 
 「紫檀多宝格方匣」は、乾隆皇帝が伝統文化に対する世界観を凝縮したものといってもよいもので、今回の目玉作品の1つです。
 また「定武本蘭亭序巻」は、九州国立博物館のみの出品ですが、中国書蹟の最高傑作、「蘭亭序」の拓本です。
 また馬遠「華燈侍宴図軸」、倪瓉「容膝斎図軸」も、出ることになっております。
 東博、九博の両展をご覧頂ければ、普段では見られない名品の数々が、しっかりとご堪能頂けます。
 徽宗皇帝のコレクションから始まり、元・明と続き、清朝の乾隆皇帝が築き上げた偉大な台北故宮の皇帝コレクションを通して、日本文化の渕源ともいえる中国文化の特質や素晴らしさを、ご理解頂ければと思います。
 
[抄=文責編集部]





(書道美術新聞 第1025号1面 2014年3月1日付)


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