(1)      (昭和51年6月7日第三種郵便物認可)美術新聞社報 平成30年(2018) 10月22日(月曜日)
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古谷蒼韻氏、死去
掲載日: 18年09月01日

「雅趣」「格調」高い評価
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 文化功労者、日本芸術院会員で、書壇の最高指導者の1人として大きな足跡を残した古谷蒼韻氏(ふるたに・そういん、本名繁=興朋会会長・蒼遼会主宰)が8月25日午前6時55分、肺炎のため府内の病院で死去した。94歳だった。葬儀は近親者で既に営まれ、後日、「お別れの会」が催される。自宅は、京都府宇治市宇治塔ノ川。

 ◇ ◇ ◇

 蒼韻氏は大正13年(1924)京都府生まれ。昭和14年、京都師範学校(現京都教育大学)に官費支給生として入学。同校4年時に書道専科が設置されたことで、生涯私淑した中野越南(越南は弟子入りを許さなかったという)の授業を受講するなどの機会に恵まれ、本格的に書を学ぶきっかけを得た。 この学生時代には、博物館での鑑賞授業で空海、一休、大燈国師らの名跡に触れたことも大きな糧となった。


19年、戦時の特別措置で師範学校を繰り上げ卒業し、宇治市の菟道小学校に教員として奉職するが、翌20年1月に応召。内地勤務で香川・豊浜の陸軍船舶特別幹部候補生部隊に配属された際には、私物保持が禁じられているなかで「大観帖寉場本」1冊を肌身離さず持ち続け、学書を続けたと言われる。


 終戦、除隊後はすぐに菟道小学校へ復職するが、22年には新設された東宇治中学校に書道教員として転じ、書への道をより確かなものにした。 そして同中学校がたまたま黄檗山万福寺に隣接していたことから、同寺境内が身近な散策のコースとなり、隠元、木庵などの木額、また開山堂に掲げられていた明末・清初の黄檗宗の僧、費隠の「瞎驢眼」の木額などに触れて、大きな影響を受けた。 越南が南禅寺の天授庵で開いた席書会で越南の助手を務め、その書きぶりを目近に見て感銘を受けたのも、このころ。


 24年、後輩の山内観や小峰鉄彰、大河内鳧東らと月例の研究会を興し、さらに28年には仲間たち約30人で会を結成し、辻本史邑を迎えて指導を受け始めた。そして書壇から距離を置き日展などにも一切関与しなかった越南の許しを取り付けて日展を目指す道を選び、翌29年日展で早くも、「雉帯箭」で初入選を果たした。


 33年、史邑急逝後は史邑門の高弟、村上三島に師事して長興会(当時)に入会するが、翌34年に日展落選を経験。これに発奮して心機一転、王羲之書法の学書に専心したことが、さらなる大きな成長につながり、36年の朝日書道公募展では「高青邱詩」で特選第一席に輝き、また同年の日展でも「高青邱・四柏」で特選・苞竹賞を受賞して、書壇に地歩を築くきっかけを得た。


 その後、42年日展で新審査員を務め、翌43年に日展会員推挙。65年日展で、「流灑」で内閣総理大臣賞を受賞し、59年には日展出品作「万葉歌」で日本芸術院賞を受賞して、書作家としての最高峰を極めた。


 また平成18年(2006)には、師村上三島氏の死去に伴う補充選挙で日本芸術院会員に推挙されて就任、22年(2010)には文化功労者顕彰に輝いた。この間、昭和56年から平成25年まで33回にわたって、書壇の代表作家として現代書道20人展に連続出品した。


 その書業については、日本芸術院会員に推挙された際の推薦理由には、
 「和漢の書の古典研究に専心し、王羲之、懐素を根底とする格調高い書風を確立。特に近年は、日本人の叙情性を伴った日本独自の書の確立を目指して良寛や光悦に傾倒し、また万葉集や良寛、芭蕉、茂吉らの日本文学を素材とした和趣に富む作品を発表し、独自の風格として高い評価を得ている」
 と評されている。

また、これに続く文化功労者顕彰を受けた際の授章理由には、
「中国の木簡をはじめとして、禅家や儒者の墨跡など和漢の古典を幅広く渉猟して独自の書風を確立。その作品は雄渾、闊達で雅趣に富み、格調の高さにおいて現代の日本の書における最高峰の一人」
とも評されている。


 近年は、88歳を迎えた平成24年に国内四会場を巡回した大規模回顧展「米寿記念―古谷蒼韻展」を開催、また27年には代表作や拓本、古墨などの関連資料の多くを千葉・成田市の成田山書道美術館に寄贈したのを機に同館で「受贈記念―古谷蒼韻展」が開かれたことが記憶に新しい。


 9月1日現在、東京・六本木の国立新美術館で開催中の第35回読売書法展の会場では、作者の漢字作品「馬鐸詩」と、調和体作品「与謝野晶子歌」の2点が展示され、名票に喪章が付されている。



(美術新聞 第1128号1面 2018年9月1日付)


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