(1)      (昭和51年6月7日第三種郵便物認可)美術新聞社報 平成29年(2017) 11月19日(日曜日)
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緒に就く「書写」の実証研究
掲載日: 15年10月15日

全書研が実践報告“低学年毛筆指導”

水書ペン書写の資料画像(報告書から) 全書研(全日本書写書道教育研究会=長野秀章理事長)はこのほど、『小学校低学年(第1、2学年)に対する毛筆(軟筆)指導・導入に関する研究及び検証』と題する報告書を発行した。

 これは同研究会が、従来からの小学校・国語科書写における低学年での鉛筆中心の硬筆指導をより充実するための実践的研究の一環として、東京都内の4小学校で実施した毛筆(軟筆)を使った授業の実践と検証・考察結果をまとめたもので、書写・書道教育界でこれまで、学習指導要領の改訂が迫るたびに必要性が叫ばれながらほとんど手が着けられずに来た組織的・体系的な「書写」教育の改善へ向けての実証的研究の取り組みとして注目される。
 
 ただ、そうは言っても今回の報告は同研究会が昨年度に実施した、「特別研究委員会小学校部会」の4名に委員(小学校長)の学校4校(1年生170名、2年生66名)でそれぞれ数回から10数回程度実施した研究授業の短期的な犲汰報告瓩任△辰董当然のことながら長期の追跡調査まで行った狎果報告瓩任癲影響や結果の猊床訴鷙隲瓩任發覆い里如∨椹罎發海海任話韻豊牘援団瓩箸靴董∧鷙霆颪棒垢蕕譴拭崋汰当事者」の感想や考察結果、同授業を受けた児童の保護者の感想などを転載、紹介するに留め、今後の研究の継続と進展に期待を表明しておこうと思う。

 ◇ ◇ ◇

特別研究委員会小学校部会
〜全書研の報告書から〜

◆研究のねらい

 この研究は、低学年の国語科書写の学習において水書ペン等の用具が、硬筆書写の学習を一層充実させるであろうことを検証するための実践である。第3学年からスタートする毛筆による書写の学習の前倒し的な学習ではなく、あくまでも硬筆学習に資するための研究である。研究のねらいと目的は、以下の五点である。

▽水書ペンと水書用紙を使用したことにより児童の学習環境に改善がみられるような実践を行うこと。
▽それらの用具を使用することにより、これまでの硬筆中心の学習に一層の改善がみられる実践を行うこと。
▽この実践が、その学習後の児童の硬筆、とりわけ鉛筆の使い方や文字の形等に効果的であったかどうかを検証すること。
▽この実践が、その学習後の児童の硬筆用具の持ち方や姿勢等に効果的であったかどうかを検証すること。
▽この実践が、その学習後の児童の学校生活などにおいて、進んで硬筆用具を使って文字を書くということに効果があったかどうかを検証すること。


◆研究のまとめ

▽毛筆(軟筆)を使用することにより、その軸の太さと穂の柔らかさによって1年生、2年生とも、硬筆(鉛筆)で書くよりも書字の時に力をかけずに済み(力まずに書け)、自然と鉛筆の持ち方、筆圧が正しくなる。
▽毛筆(軟筆)を使用した学級は、毛筆(軟筆)を使用しなかった学級に比べ、「とめ」「はね」「はらい」等の筆使いに関わる意識が高まる。
▽毛筆(軟筆)を使用した学級では、正しい「はらい」「むすび」ができる児童が多くなり、筆圧の調整を理解するとともにそれを実践できる。
▽硬筆だけで指導した学級においては、45分の授業時間の中で集中力が続かなくなる時間帯ができてしまうが、毛筆(軟筆)を展開の時間に入れることで、意識が変わり、児童の集中力が持続する。また、姿勢や筆記具の持ち方も意識させることができた。
▽展開の中で、毛筆(軟筆)を入れる時間の長さは一〇分程度が適当であろう。それ以上長いと飽きて遊び始めてしまう。
▽今回の研究授業の毛筆(軟筆)を使う場面ではマスを使わなかったが、字形に関しては、マスを付けた水書用紙(練習用紙)を使う方が整う。
▽教員も児童も水書ペンと水書用紙を使用することには筆と墨を使用する毛筆学習よりも導入に抵抗感がない。また、保護者も汚れないことで好意的に受け止めている。


◆今後の課題

▽用具の開発(水書ペンに関すること)〓軸の長さと太さ(水タンクの大きさを含む)、穂の長さと太さ、穂の柔らかさと材質
▽同(水書用紙に関すること)〓用紙の大きさと素材、罫の入れ方(マスの大きさ)
▽用具の扱い方〓小筆や細い水書ペンの持ち方(筆持ちか鉛筆持ちか)、用具負担金をどこが負担するか(保護者か学校か)
▽第三学年の毛筆書写へのスムーズな移行〓どの段階で筆と墨を使用する学習に移行するか、第一学年、第二学年の指導内容と第三学年以降の指導内容をどのように分けるか


◆教員の感想

▽鉛筆では、「とめ」「はね」「はらい」がはっきりしないため、うまく指導できなかった。しかし水書ペンでは、「とめ」「はね」「はらい」の筆使いがはっきりするので指導に有効であった。
▽児童は鉛筆・ノート以外の筆記用具(水書ペン・水書用紙)を使って書いたので、興味をもって授業に臨んでいた。学習を繰り返すうちにめあてをよく理解して、鉛筆書きの時よりも集中して水書きに取り組んでいた。また、書写の時間を楽しみにする児童が増えた。
▽水書きを行ったことにより一時間の中で顕著な上達が見られる児童が多くなった。自分がめあてを達成したという実感があるので振り返りの時間を楽しみにしている児童が多い。まとめ書きの方が試し書きより上達していることを実物投影機で映して、全体で確かめ合うことができた。
▽「魔法の紙」(水書用紙)は時間がたつと消えてしまうので失敗が残らず、楽しく感じている様子である。また、他の教科の時間に比べ書写の時間は文字を丁寧に書くようになった。
▽一時間の中で、姿勢や筆記具の持ち方について繰り返し指導したことで、その都度、児童に正しい姿勢や持ち方について意識させることができた。
▽課題を追究する学習なので、練習時間の私語がなくなった。
▽水書ペンを使用したことで「始筆」「終筆」を意識する児童が増えた。また、指導していてその違いを捉えやすい。
▽鉛筆では、筆圧で文字の濃さに違いが出るが、水書ペンでは、筆の使い方や力の入れ具合で書いた文字の点画の形や太さに違いが出ることを体感させることができた。
▽鉛筆では評価されることが少なかった児童の中に、水書ペンではめあてを達成できた児童がいた。その児童を認め、ほめることを通して、意欲的に書写学習に取り組ませることができた。


◆保護者の感想

▽小さい頃から筆の感覚に親しむのはよいことだと感じた。
▽リズムよく体を使って、「はらい」や「とめ」を覚えるのはとてもよい。
▽水書きは皆、楽しそうに取り組んでいた。
▽集中力アップにつながると思う。
▽子供が、書写は好きな授業だと言っていた。本当にできているか疑問だったが、自分の子を含め、学級全員の子供がきちんと取り組んでいて驚いた。



(書道美術新聞 第1062号1面 2015年10月15日付)


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