(1)      (昭和51年6月7日第三種郵便物認可)美術新聞社報 平成31年(2019) 2月19日(火曜日)
  
投稿日時: 18年05月15日

 いささか旧聞だが、「日本人は水と安全はタダだと思っている」という名言で名高いイザヤ・ベンダサンなら、何とのたまうのだろう。さしずめ、「日本人は言語文化、文字文化は、空気のようなものだと思っている」というのかも。このところ寝ても覚めても(?)、「文字文化とはなにか」という難問に憑りつかれて、「いざや、便出さん」の真逆(失敬!)で、実にスッキリしない

▼そもそもの始まりは、文科省の「文字文化の豊かさに触れ」というご託宣なのだから、文科省に質問状でも出してみたいくらいだ。「文字とは何か」なら、難問でもなんでもないような気がするし、「文化」だけでも同じだが、くっつけた途端に、なにか焦点が定まらなくなるのは筆者だけだろうか

▼そういえば我が国では、「鍋」や「包丁」や「住宅」などに「文化」を付けて有り難がった時代がある。これは、ちょとした新しさや洋風といった響きなのだろうが、「文字」に付けた場合、当然もっと骨太の、奥深い、しっかりした内容が期待されることは確か

▼それで思い立って調べてみたのだが、全国に数ある大学で「文字文化」を冠した学部や専攻、コースといったものを置く大学は皆無のようだ。言語文化学科は、辛うじて東京外語大にある。

(書道美術新聞 第1122号1面 2018年5月15日付)


投稿日時: 18年05月01日

 書写書道教育推進協の「説明会」で、文科省の言う「水書用筆等」が漸く少しベールを脱ぎ始めた

▼説明によると「水書用筆」は、鉛筆や毛筆とは使用目的が異なり、「書く動作」の支援が目的の用具で、「運筆を理解する」ための「弾力のある体験学習用具」だという。だから、鉛筆などの握りが固い児童の力みを解くのにも有効で、そこで具体的に示された「水書用筆」は、穂の材質は獣毛、ナイロン、混毛系のいずれでもよく、穂の構造は、穂のすべてをおろして水書する上で、また含んだ水が少なくなった際にも外側の短い上毛(化粧毛)が邪魔にならないような造りが望ましい

▼また、従来からあるフィスペン(水タンク内臓の水筆ペン)も含まれるとする一方で、学校での指導には毛筆の形状をベースにした用具を普及させたいとも表明したが、これはやはり3学年からの「毛筆指導」のスタートを視野に入れた考え方だろう

▼資料として示された「水書用筆」の一種は、獣毛で軸は細身の竹製。重さも3グラムしかなく、この軸にテーピングをしてグリップの太さや滑り止めを補うことで、重さも3〜5グラム、軸の太さも6〜12ミリの範囲で変えた例を示していた。このあたりが落としどころなのかもしれない。

(書道美術新聞 第1121号1面 2018年5月1日付)


投稿日時: 18年04月15日

 昨秋、美術新聞社が大崎WGと共催で同ギャラリーで開催した「酒の書と…」展の中国・蘇州展が開幕したので、現地へ覗きに行った

▼同展は蘇州市政府の全面的協力で立派な会場の提供も受け、日本側の171作家の全作品をはじめとする日中約500点による盛大な展観となったのだが、その現地で現代中国ならではの面白い体験が3つほどあった

▼1つは、準備の段階で市側から「タイトルの変更」を要請されたことで、当局者の話では、習政権になってから「酒」に関する規制が有形無形に強化、「酒の」で始まる展覧会は通りそうにないとか。で、「曲水流觴‐書道与酒/綿和醇馥千年」展という、訳の分からない展名となった

▼規制の関連と思われるのが、食事時に出たビールがどれも3%か2・5%で、水っぽいこと。2・5%ビールは初体験だった

▼そしてもう1つは、蘇州展に市政府の号令一下(らしい)、小学校11校、中学校6校から1、000点近い犹申出品瓩魎鵑擦討發蕕辰燭里世、それが何と「酒」字を篆隷はおろか金文や甲骨文で書いたもの、牋中八仙瓩砲泙弔錣訖涓茲覆匹房鮴膺豢磴鮖燭靴榛酖々。さすが文字と漢詩の母国…。日本の子供たちには到底…。いや、たぶんPTAが…。呵々!

(書道美術新聞 第1120号1面 2018年4月15日付)


投稿日時: 18年04月01日

 これは、高校用指導要領の牋しき伝統瓠とも言うべきもの。「いつかは言い出さねば」と思っていたことなので、幸い今回、文科省にツンドクされていた「パブ・コメ」中にこの点に言及した提言があったので、早速――

▼新指導要領でも、「各学科に共通する各教科」として国語、地理歴史、公民、数学、理科など11の教科が設定され、その中の「芸術」4科目の一角として「書道」が置かれていることは衆知の事実。だが、これとは別に「主として専門学科において開設される各教科」として農業、工業、商業など13教科が置かれている中には、音楽、美術はあるのに「書道」は蚊帳の外なのだ

▼学校教育法施行規則という法律の附則にそうあるからで、10年前に告示の現行指導要領でも13教科で変わりはない。しかし実は、現行では「共通する各教科」は10教科で、今回11番目に「理数」という新教科が加えられているのだから、この法律が絶対でないことは明らか

▼今や全国の書道学科やコースを設置している高校の関係者で組織している「全国書道高等学校協議会」の加盟校も19校に上る時代なのだがら、次回の改訂ではぜひに! いや、10年も待てない!「追加告示」を求める運動を始めよう!

(書道美術新聞 第1119号1面 2018年4月1日付)


投稿日時: 18年03月15日

 最近、「文字文化」というものを考える機会が増え、結構楽しんでいる

▼文字でよく引き合いに出されるのが、ネット上でも「文字」「ソクラテス」でたちどころに出てくる有名な話だが、プラトンの対話編にある一節がある。文字を発明した位の低い神が「これこそ記憶と知恵の秘薬だ」と自慢すると、最高位の神が「文字はせいぜい、忘れていたことを思い出す手掛かりになるだけ」「文字が伝える知恵など、真実の知恵ではない」と答えたという例え話を、ソクラテスが言うくだりである

▼そこから、「文字を使うと、人間は記憶力が衰えてバカになる」というのが古代ギリシャ人の考え方だったという説になるわけである。実際、わが『古事記』の稗田阿礼も、メモが取れたら名を残すこともなかっただろう。そういえば、ソクラテスはただの1冊も本を残していないのだから、あながちプラトンの作り話とは言えないのかもしれない。

▼そうそう、大学時代にある教授から「せっせとノートを取ってるやつほど出来が悪い」「ノートなんか取らず、その場でしっかり覚えろ」と言われたことがある。一理あるかもしれない。が、だからと言って猜源無用論瓩鮓世うとしているわけではアリマセン! 念のため!

(書道美術新聞 第1118号1面 2017年3月15日付)


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