【覆面座談会】新版『書道機拔飢塀颪鯑匹鵑

掲載日: 12年05月15日 | カテゴリ: トップ記事


 司会 それではまず、各社版の教科書に目を通しての感想からお願いします。

 A教諭 各社版とも判型がB5からA4へと大きくなり、総じて丁寧な作りになっていると思う。しかし、全社の教科書が「書道機廚覗霆顱≫申颪覆匹縫據璽犬魍笋い燭里呂匹Δね。隷書も2社が増ページしている。これは従来は、「書道供廚筺岫掘廚念靴辰討た内容だから、いざ習うときに生徒たちにとっても新味がなくなるし、「供廚筺岫掘廚諒埆孤瑤郎い辰討い襪里任呂覆い。

 B教諭 そうそう、「機廚売申颪鮟个靴燭らといって、現場では「機廚売申颪泙任賄底教え切れない。「供廚龍飢塀颪任癲改めて初歩的な課題から載せて欲しいね。それでもダブリ感は当然出てくるから、なぜ「機廚粘困┐動靴Δ里疑問は残るね。

 C教授 その通りだね。とにかく今回の『書道機拔飢塀颪呂匹譴眩躄崚で、盛り沢山だ。それもあってか、どれからも明確なポリシーといったものが感じられない。

 D編集者 草書や篆書の導入も、「かな書の理解を深めるため」とか、「篆刻を扱う基礎に」とか説明しているが、具体的にどう指導したいのかが判然としない。隷書でもそうだが、「機廚任匹海泙念靴Δ戮なのか、そういう肝心な議論が欠けてる印象だね。

 B教諭 私は、比較的光村本には編集の努力が感じられると思ったね。そぎ落とした印象で、ある程度力量のある教員には使い易い気がする。

 C教授 前回の改訂時は6社あったのに、10年後の今回は4社まで減ってしまった。現在、パイは約30万部だから、熾烈な商戦が待っているのだろうが、4社なら共存できる規模ともいえる。過当競争をせず、内容やポリシーで競い合って欲しいね。
 ◇ ◇ ◇

 司会 新指導要領との関係から見て、各社の取り組みはどうでしょう。

 D編集者 例えば、新しい事項として「文字の成り立ちに関わる理解を重視する」ことになったが、そのせいかどうか分からないけど、書道史的な記述は増えているね。漢字書体の成立と変遷といった説明についても、各社それぞれに工夫はしている。教育図書が「書く」「刻む」「鋳込む」のメディア的視点を冒頭で扱っているのが、目についた。

 A教諭 今回の改訂で、3分野をまんべんなく学習するということになったのだが、実質的には大きな変化はないだろうね。ただ、同じ必修ならウエートは同じでなければならないはずだ。この3分野で考えるなら、交じりが4、漢字が3、仮名が3となるのが、本来は自然だと思うが、それでは現場が受け入れないだろうね。

 B教諭 まあ、20年前は漢字が6〜7割、仮名が2〜3割、交じりは暮らしの書などの分野に細々とあった位だったのだから、前回の改訂で交じりの必修化が行われたのは、確かに画期的ではあったね。もっとも現場では、多くの教員がうまく転換できずに困っていたわけで、そこへ助け舟のように今回の3分野必修化が、「戻ってきた」っていう感じだよね。

 D編集者 そうそう、その辺は教科書出版社は、十分知り尽くしているからね。

 司会 参考作例や、鑑賞教材の扱いに、かなり動きが見られたようですが。

 C教授 そう、本紙でも取り上げていたが、書家の作品が増えたことは、とても分かり易いし、指導もし易い。結構なことだと思うね。ただ、高校の書道が、書く楽しみと、見る楽しみとの両方を育てようとしていることを考えると、書家の書を取り上げる際は、やはり十分慎重にやって欲しいと思う。現状を見ると、やはり、書き手養成という意識が前面に出ているような気がする。「まずは、書いてみよう」ということかな。

 A教諭 確かにそうだが、教科書でこれまでにも何度も取り上げられてきている定番作品は、それなりにいいと思うよ。たとえば、日比野五鳳の「赤とんぼ」は仮名の運筆のリズムを基調にして書かれている名作だし、青木香流の「つばめの…」は紙面構成と線質のバリエーションが絶妙、駒井鵞静の「ソロモン…」は背景に造像記のような力強い楷書のタッチが見え隠れしながらも見事にオリジナリティーを発揮しており、構成的にも実に面白い。これらはそれぞれに高校生にとって、鑑賞作品として十分適していると思う。

 D編集者 各社とも、指導要領が「名筆」とか、「古典を学び、生かす」とかいっているのを相当意識はしているようだね。そうした中で、確かに高村光太郎は後退したし、林芙美子らも消えた。一方で、書家の作品の位置づけが高まったようにも見える。ただ、作品掲載は、著作権上の許諾の得やすさが左右する面もあるし、今後『書道供戮筺忰掘戮龍飢塀颪能个討る可能性もあるから、『機戮世韻巴任犬襪里枠鬚韻燭い諭

 B教諭 「名筆」の文言は確かに重いね。名筆とは何なのか、その人となりが慕われているから名筆と呼べるのか、これから現場でも相当考えさせられそうだ。文人の書にしても、卒意の書といわれ、構成等も感覚的に生み出されたものが多い。筆の扱いも熟達したものではない。ただ、熟達したものが全て名筆という訳ではないから難しい。熟達した文人の書というのも、まずお目に掛かれないし。

 A教諭 文人の作品は確かに扱いが減ったね。書家の作品は、確かに増えて来ている。しかし、完全に評価の定まった書家の作品というものはまだないから、編集段階で提案するのはどうしても躊躇してしまう。そこを勇気を出して提案し、検定も通り、現場でも抵抗なく受け入れられたという積み重ねがあって、漸く出しやすくなってきたということだろうね。ただ、近・現代の書家の作品は、系列の人が意見してくる場合も多いから、やりにくいことは変わらないだろうけど。それに、特定の作家の作品が載ってないと、その地域では採用されにくいというようなケースもあるし。

 司会 現存作家の掲載については、どうでしょう。

 C教授 鑑賞のためというのでなく、指導上の意図を汲んだ作例を頼むことはよくある。たとえば、ある名筆をベースにした作例を書いて欲しいと引き受け手を探すこともしばしばだけど、これは相当実力のある作家でないとなかなか難しい。作家は、自分の色を出したものはすぐ書けるが、教科書では色は抑えてもらいたいわけでね。だから、頼んでも、使えない作品が出てくることが少なくないよ。

 D編集者 当たり前といえば当たり前だが、光太郎や賢治の作品がその事跡や、文章などとともに紹介されているのとは対照的に、書家の作品は、あくまでも表現のバリエーションとして扱われている印象だね。ニワトリか卵か知らないが、書家がますます技術論に押し込められているような気がしないでもない。

 司会 最後に、各社版の見どころをまとめてください。

 C教授 4社の中では、今回は光村が一番大胆に作っている印象だね。冒険をしていると思う。社会的認知を得ているか疑問のパフォーマンス的なものを前面に持ってきたのも印象的で、レイアウトにも特徴がある。かなの執筆法の見せ方も斬新だが、これは少々大胆過ぎ、はしょり過ぎの感もある。教員の力量にバラつきが否めない現場の状況に、もう少し配慮すべきかもしれない。東京書籍はその点、オーソドックスな編集手法の中にキメ細かい配慮が見られ、用具・用材等にもよく目配りしている。誌面構成も変化に富み、現場が欲しがっている内容がよく盛られている。蘭亭序の裏に、硬筆による臨書を入れているのも目についた。教育出版は、トップシェアを誇るだけに自己のスタイルを守っている感じだが、造像記の拓本を持ってきたのは現場で歓迎されそうだ。教育図書は、従来通り蘭亭序の裏に風信帖を置くなど、こだわりを感じさせる編集ぶりだ。中国古典の扱いでも、各社が宋元や明清の書蹟の扱いをほとんど取りやめた流れのなかで、教図だけは黄庭堅を出しているのも目立っている。

 司会 それでは、この辺で。

×  ×  ×

【注】この覆面座談会は、編集部が各方面に取材した内容をまとめたものです。

(書道美術新聞 第984号5面 2012年5月15日付)



kayahara.com : 萱原書房・美術新聞社のサイトにて更に多くのニュース記事をよむことができます
http://kayahara.com

このニュース記事が掲載されているURL:
http://kayahara.com/modules/bulletin/index.php?page=article&storyid=251