’07アンケートから

掲載日: 07年12月15日 | カテゴリ: 書道美術新聞【1面】

'07アンケートから



◆以下のアンケートは、例年通り書道界各界有志の方々にお願いしました。掲載は50音順です。設問は一部順不同で次の通りです。
○今年特に印象に残ったこと
○特記しておきたい展覧会や作品、行事
○年末に当たっての所感

 ◇ ◇ ◇

赤堀脩 氏(前全高書研会長)
○国立新美術館での日展開催が特筆される。関連して行われた第五科の懇親会で、杉岡華邨先生ほか挨拶に立たれた先生方が共通して「真の書作に取り組むべし」と話された。日展の未来は、師風にすがり、すがらせる姿からは望めないという警告と受け取った。
○3月に奈良で開催された雪心会書作展における今井凌雪コレクション・本会会員所蔵拓本展。11月の全高書研千葉大会および併催の房総の書展など記憶に残る。


有岡■崖氏(謙慎書道会常任理事)
○今年は書道界にとって巨星が相次いで黄泉に旅立たれた年となった。文化功労者成瀬映山先生、同じく大平山涛先生、文化勲章受章者小林斗アン先生の悲報は記憶に新しい。中でも私が所属する謙慎書道会にとって、最高顧問であった小林、成瀬両先生を失ったことは痛恨の極みであり、今後の我々に課せられた責任の重さを改めて考えさせられる昨今である。
○国立新美術館に、多くの展覧会が東京都美術館から移って開催されるようになった。どの団体もそれぞれに今後に対しての方向性を見定め工夫していると思うが、問題はこうして開催された展覧会と入場者数との関係で、様々な視点から綿密に分析、検討せねばならないと思う。


天川禅峰氏(国際RAYKI会長)
○書道界も若年層が増え、書の感覚的表現も大きく変化してきていることを痛感する。
○新時代において、人間生活、健康、企業等、様々に困った問題を抱えている人が多い。私は40年前頃から気功、気学、護符学を学び、癒手技法書画(波動書画)作品に取り組んで来た。そんな私も米寿を迎えたが、ますます人のお役に立つ生き方で、元気に作品制作を進展させていきたい。


大井錦亭氏(創玄書道会副会長)
○創玄書道会の内山玲子先生が毎日書道顕彰に続き毎日芸術賞を受賞されたのは快挙であり、欣快に堪えない。その半面、成瀬映山先生、小林斗アン先生、大平山涛先生、鈴木桐華先生、野口白汀先生ら書道界の重鎮の訃報に接し、寂しさひとしおである。来年はお互い健康に一層留意し、明るく飛躍の年でありたい。
○国立新美術館が完成し、毎日展、日展が開催され、一段と美術に関心が高まったかのようである。同美術館で開催された毎日展の特別企画展、金子鴎亭展の開催は、先生のご活躍と書業の全てを知る好企画であり、大盛況裡に終了したことは何よりも嬉しい。
○秋田魁新報社主催展の第70回記念展が開催された。地方展で70回とは素晴らしいこと。第1回展の主査審査員は比田井天来先生で、私が今年7回目の主査として審査担当できたことは光栄の至りである。何よりも内容の充実が嬉しかった。
○今後の日本の書道界として考えられることは、やはり日本語の書展がどうあるべきかが大きな課題である。その発展に一層努力していきたい。


太田義久氏(創玄書道会参与)
○今年も大家の先生方が何人も亡くなられた。書道界も多分に高齢化社会ではあるが、指導や会議、パーティ等忙しすぎるのではないだろうか。有能な先生方に、平成の書の秀作をたくさん書いて欲しいと思う。
○戸田提山先生の遺墨展で受けた感動。作品が会場の名古屋城天守閣の雰囲気と一体化していたように思う。
○創玄展に「さよなら都美館」、毎日展に「国立新美術館こんにちは」と、自作の文の連作を発表。詩文書の新しい方向性を試みたつもりだったが、残念ながら評価は今一つだった。京都深草の石峰寺で、貫名菘翁書の伊藤若冲の墓碑と出合った。明春紹介したい。


小笠原摂燿氏(天真書道会会長)
○5年前に転倒して痛めた右膝の関節の調子が悪く、大書展以外はあまり見ていない。拝見した中で心に残る書展といえば、何といっても「長恨歌への憧れ」と銘打った、あの超大作を出品した北海道の書家、山田太虚氏の古稀記念展。古稀にしてあのバイタリティーには頭の下がる思いがした。もう一つは玄潮会の小川秀石氏の個展。これも度肝を抜かれた。書への情熱が紙面いっぱいに広がっていた。氏の戦争などに対する、生涯忘れ得ない思いを書に託した作品展であった。
○国立新美術館は、照明も明るく各室の広さも鑑賞しやすかった。六本木という立地は、ヤングや一般の人の出入りが多く、こういった人たちに書に対する認識を深めてもらうという意味でも、チャンスだと思う。


尾崎邑鵬氏(由源社主宰)
○数多くの先輩、同僚の皆さんとお別れしたことは、寂しいかぎりだった。成瀬映山先生、大平山涛先生、鈴木桐華先生、野口白汀先生等々。さらに小林斗アン先生までも。
○日展で素晴らしい作が賞に選ばれたことが記憶に新しい。吉川蕉仙氏、星弘道氏等々。樽本樹邨氏もいい作だった。自分のところで恐縮だが、辻元邑園の作もだんだん垢抜けてきたように思う。その他の作品で印象深かったのは、江口大象氏の第47回璞社書展出品作。超大作に挑んで気を吐いている。
○今年を振り返ってみて、まずまず元気で一年を送れたことは、大変ありがたいことだと思う。


恩地春洋氏(書道芸術院理事長)
○成瀬映山、野口白汀、鈴木桐華、大平山涛、小林斗アンなど、書道界の巨星が相次いで逝去された。元毎日新聞社長渡辺襄、「書の甲子園」生みの親小野富治、書道新聞社滑川雲山などの諸氏も鬼籍に入られた。
○国立新美術館での金子鴎亭展をはじめ、戸田提山展、種谷扇舟展などがその書業の全貌を見せ、日比野光鳳、安藤豊邨、小川秀石、慶徳紀子、赤平泰処、西野象山、北野摂山などが意欲的な作品を発表した。北京での女流代表作家展も盛り上がった。
○書道芸術院六〇周年記念事業としての海外展(ダブリン展、ウイーン展)は、大使館の支援も得て大成功だった。アイルランドでは初めての全貌展が、オーストリアでは十数年にわたる長期的な取り組みが評価された。「風林火山」の題字好評。書の伝統を継承することは、時代に即した工夫がいる。守旧的では発展しないし、伝統を守ることにはならない。組織自体が硬直化しないよう、時代の声を聞き、識者の声を聞く姿勢が必要と痛感する。


片山竜篁氏(竜墨書道会会長)
○国立新美術館がオープンした。館内は最先端の展示設備が完備されている。展覧会では、まず昨年暮れから今年3月まで台北故宮で開催された「北宋書画特別展」。国宝級の逸品など80余点の書画が公開され、まさに必見の展覧会であった。そして7月開幕の「日展100年記念展」。日本を代表する総合美術展である日展は、これまで最もオープンな大規模展として機能し、日本文化の振興に果たしてきた役割は多大である。
○8月に小林斗アン氏が、9月に大平山涛氏が死去された。まことに残念なことである。
○来春の「20人展」に、新出品者として高木聖雨氏が選出された。ますますのご活躍が期待される。


加藤祐司氏(全書研理事長)
○第48回全書研・香川大会が11月に高松市で開催され、520余名の参加を得て盛会であった。ここで全国の小・中・高校を対象に実施した「書写書道の実態に関する調査」の集計と考察が50頁の冊子にまとめられ報告されたことも特筆される。
○文科省が全国で実施した「中学校書写、毛筆に関する調査」を受けて、全書研をはじめ全高書研などの6団体が一致団結して中教審宛に「要望書」を提出(7月30日付)したこと。
○来年1月に中教審は新学習指導要領の方向性をまとめた最終答申を出し、これを受けて文科省は小・中学校の学習指導要領の改訂を3月までに(高校はやや遅れて)告示予定という。よって来年は、書写書道教育にとっては今後10年の方向性を決定する大事な一年間となろう。小・中・高・大学の一層の接続と連携、および家庭・地域との協同・支援が求められる年になる。


金津大潮氏(玄倫社会長)
○毎年述べていることだが、展覧会が興業化し、大新聞社事業に牛耳られ、伝統ある東洋芸術の粋であるべき書の本質が随分と変貌してきている。古典派も最近は主体性を失い、現代派はいうに及ばない。「日展」はこれまで一番品格のあるものと期待されてきたが、今やその品位を失い、観者の眼を気にして主体性がなく、これまた興業化の一途を辿っている。総じて現今の書作家は、制作までの苦労をせず、ましてや正しい古典の上に立っての品格など見られないのは、まことに残念である。
○今年は書作70年の決算として書業展を開催させて頂いた。各方面の助力を得て無事終了し、非常に感慨深い。


黒田賢一氏(正筆会理事長)
○日展が国立新美術館で開催されたこと。日展が100年を迎え、六本木の新美術館に会場を移したこともあり、五科の出品数が一万点を超えた。多くの方が今年こそと入選をめざしたように思う。しかし壁面の関係もあり、依然として入選率は一割に届かない厳しいものであった。しかし陳列については、スッキリとした今までにない雰囲気だったように思う。
○日本の書壇をリードしてこられた小林斗アン先生、成瀬映山先生が亡くなられ、巨星落つの感がひとしおであった。


小林朴翠氏(朴翠書道会会長)
○本年に限り、私自身の動向を述べさせてもらいたい。実は昨年3月に脳梗塞で緊急入院し、そのまま死ぬかと覚悟した。だが医者も驚くほど回復し、右手、右足、言葉の三つが10日ほどで快方に向かった。3週間目には、リハビリの一環として毛筆で書かせてもらった。半切を中心に大字の漢字やかなを書き始め、なんとかサマになるようにまでなった。
○そして本年は、私の所属している団体の関係の展覧会に大作から小品まですべてに出品した。こういう次第だから、私が脳梗塞で倒れたことを知っている人は少ない。現在の心境は「生かされて除夜の鐘聴く幸いに、思わず口に念仏を誦す」といったところ。


小原道城氏(北海道書道協会理事長)
○書振連(全日本書文化振興連盟)の総会・シンポジウムが6月に東京で開催された。全国的に注視された中学校「書写」の未履修問題や、パソコンなどの影響による子供の書く文字の乱れ等々、小・中学生の書道離れによる書塾の今日的諸問題が提起された。高齢化も少子化も逆手に取った、書塾再活性化の道を探らねばならない。その意味で、書振連が「シルバー書道展」の改革案として打ち出した「シルバーから/わ・か・ばまで」書道展は、一つの可能性を秘めているといえよう。
○東京国立博物館・台東区立書道博物館・三井記念美術館の3館で「拓本の世界‐三館所蔵善本碑帖展」が開催された。三年前の合同展とはまた異なる絶好の企画、大変勉強になった。高島菊次郎、中村不折、三井高堅の3氏の蒐集への見識と情熱に感動した。
○「日展100年記念展」を六本木の国立新美術館で見た。赤羽雲庭の「暮山巍峨」、鈴木翠軒の「禅牀夢美人」の前では特に共鳴するものが大きかった。第39回日展は同館での初の開催なので、今度こそゆったりと鑑賞できるものと期待して出掛けたが、これは見事に裏切られた。随分疲れてしまった。特に巻子の展示と二×八尺横の三段掛けは一考を要すると思う。


妹尾華岑氏(華岑書道会主宰)
○書道が稽古事の種目としてますます遠のいていくということは、学習塾、パソコンの影響等も多分にあると思われるが、指導する側の工夫も必要だと思う。用具の工夫や、文字の創造と書道の関係など、面白く分かりやすく指導して行くことが大切だろう。
○私事にわたるが、11月の個展において、伝統書のほか、多数の自分流の作品を「造形書の世界」として発表したが、好評を得ることができた。


高木聖雨氏(謙慎書道会事務局長)
○謙慎書道会最高顧問の成瀬映山先生が7月に、同じく最高顧問の小林斗アン先生が8月に相次いで急逝され、書道界にとって多大な損失である。ほかにも、多くのご指導いただいた先生方のご逝去があった。ご冥福をお祈りしたい。
○来年3月13日から22日まで、東京美術倶楽部において謙慎書道会展第70回記念「日中書法の伝承」展を開催する。東京国立博物館の企画協力を頂き、漢字、かな、篆刻の名品を陳列する。その大半を民間に眠るもので構成し、その中に東博、大阪市美、台東区立書道博物館、藤井有鄰館、そして中国湖南省より2003年以降に出土した木簡を交え、書の愛好家に満足してもらえる展示となるだろう。ぜひご高覧いただきたい。


田中鳳柳氏(太玄会会長)
○書道界の重鎮が相次いで逝去されたこと。それぞれの方が戦後から今日までの書道界に尽力された功績は、真に偉大なものと思う。
○国立新美術館で開催の各展や東博、台東区立書道博物館の企画展等は眼福。個展も印象に残るものが多い。飯島敬芳先生の遺墨展は、書の精華ともいうべき展観であった。
○書の本質は、奇を衒うことなく無理無駄のないものが良書といわれる。それは自然体で表現するということだろう。大型の展覧会では、大作に挑戦する関係から、どうしても無理や無駄が多くなると思う。古典の書には、このようなものは見られない。淡々とした心境で筆を揮うような作品が多くなればと思う。高齢化と書道人口の減少は、量と質の問題に関連している。内容のある作品制作を来年も心がけたい。


中島荘牛氏(独立書人団理事)
○「猛女にして菩薩」の矢萩春恵さんの西太后展は凄かった。事実上の国家賞である日本芸術院賞も、洋画のように日展対象枠にこだわらず、在野の作家にも授賞を広げるべきだと思うのは私一人ではあるまい。本展などはそんな想いを誘う書展だった。
○学校教育の書は危機に瀕している。国語科に間借りしての整った字を記す指導をする「書写」では、客観的説得性に乏しい。私は算数オリンピック委員会との共催で、開成、筑駒、灘、桜陰などの各校の英才を招いて「全日本小中学生創才セミナー」を開催した。彼らの知的能力の高さには、驚くべきものがあった。そんな彼らをはじめ、今を生きる才能溢れる子どもたちに、単なる書写を教えたのでは書の魅力に欠ける。芸術科書道、その基礎教育としての習字と捉え、今こそ理念、哲学をもって芸術科としての独立を提唱すべき時ではなかろうか。


中村伸夫氏(筑波大学教授)
○この夏、小林斗アン先生や成瀬映山先生をはじめとする書道界の重鎮が相次いで急逝されたことが惜しまれる。
○各種の大規模な公募展が、六本木の新しい国立美術館に移って開催された。書の展示には向かないような気がして、初めは「やはり上野の方が」と思っていた。しかし何回か足を運ぶうちに違和感もなくなり、会場の違いなど気にせず落ち着いて展示作品を鑑賞できるようになった。
○勤務校のCOEプロジェクトの仕事で今年の春も杭州を訪ねた。わずかな自由時間を使って大通りに面した書店をのぞいたが、あまりに近代化した店内の様子に驚かされた。しかし、どんなに近代化しても、伝統文化を大切にするお国柄だけに書法のコーナーも充実していて、一般向けの廉価本や習字テキストがたくさん並んでいたことが嬉しかった。今日の日本の書店では、考えられないことである。勤務校で開催された書学書道史学会の第18回大会が、多くの人々の協力のもとに無事終了したこと。また今秋完成をみた同学会編の『書道史〈年表〉事典』の改訂版の編集に携わったことなども忘れられない。


萩原東邨氏(松風書道会会長)
○近年、教育界における書道の衰退は驚くばかりだ。昨年暮れに教育基本法が改正されたが、その成果の大きからんことを祈念してやまない。
○本年特に心に残る展覧会に、東京・文京区の区制60年記念展として開催された尾上柴舟展が挙げられる。二度目の参観の時に柴舟先生ご子息にお会いし、柴舟先生が当時学習院教授をされていて、明治天皇崩御の折、学習院院長であった乃木典介大将の殉死に駆けつけたとの話を聞いて感慨ひとしおだった。夏目漱石展が江戸東京博物館において開催された。二松学舎創立130周年記念として開催された「二松学舎と近代書道」展。展示作品も素晴らしかった。六本木の国立新美術館における毎日展、読売展、日展。それに現代書道の先鞭をつけた金子鴎亭先生の遺墨展の迫力ある筆致に、面目躍如たるものを感じた。


林 錦洞氏(産経国際書会最高顧問)
○書壇長老の訃が多かった。また浄土宗門長老、学徒出陣海軍同期の散華も続いた。なかんずく小林斗アン先生の追懐は重い。老生、住職二カ寺を合併新築記念に「明賢尺牘」復刻版を上梓した。康有為が収蔵のものを親友の犬養木堂に贈った名帖で、文氏一族、祝允明、日本では皆無の李応禎などを収め、見開きに呉昌碩刻「木堂之印」がある。この一冊に小林斗アン先生が刻された「錦洞秘笈」印(鶏血材陽刻)が影印されている。
○北海道立函館美術館で開催された「現代日本の書展」の西川寧先生の篆書作に、造形筆技の啓示を与えられたのも収穫。赤平泰処氏「わが心の書展」は近来の快作展。60代のパワーと感性による大作林立。書の大作はややもするとデモンストレーションで骨格筆技の甘さが問われるが、彼の作品には徹底した書技と、喜びのリズム感を覚えた。
○10月、ハワイ州知事から知事賞顕彰を受けた。30余年間、ハワイ原住民の石刻画ハワイアンペトログリフの調査研究、書象としての創作を可能にして内外で発表したことへの評価である。石刻画の発想、造形が中国古文金文に共通し、これを篆法で創作発表する興味にひかれて今日に至った。来年4月には、ペトログリフのみの錦洞書象展を計画している。


東野敏夫氏(全高書研会長)
○今秋、第32回全高書研・千葉大会を、ホテルポートプラザちばをはじめ成田山書道美術館などの各会場で、416名の参加者を得て開催した。今大会では、現行の学習指導要領の実施より五年を経過して得られた教育実践の成果を明らかにするとともに、多角的な実践研究とその成果を広く発信し、さらに「書くこと」や「書く行為」の重要性と必然性を深く追求し、時代に生きる書道教育の新たなる実践のステージを切り拓くことができた。実り多い研究大会であった。
○昨年12月に教育基本法が改正され、「豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成」、「伝統の継承と、新しい文化の創造」などを規定し、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」などと、まさに我々が携わる書道教育の目標とその実践に直接的に合致する文言が盛り込まれた。これらが、今後の芸術教育のあり方や方向性に、大きな「うねり」と「いきおい」となることを願う。


平形精逸氏(全国大学書道学会幹事長)
○謙慎書道会最高顧問の成瀬映山先生と小林斗アン先生が相次いで他界されたこと。
○昨年12月に文科省が実施した中学校における必修教科等の未履修に関する実態調査の結果が、2月に発表された。「書写」「毛筆」については、調査時期等の関係もあってか憂慮されたような数値ではなかったが、これを契機に中学校書写の授業未実施に歯止めがかかったこと。さらにこれと連動して今春、43年ぶりに実施された全国学力テストに「書写」の内容が出題されたこと。
○大学書道三学会の大会が25年ぶりに秋田大学を会場に開催された。中教審の新学習指導要領審議の中間まとめに示された「文字の文化」をめぐり、今後の書写書道教育の新たな課題等が活発に討議され、有意義であった。


古谷蒼韻氏(日本芸術院会員)
○各種の大規模な展覧会が新会場の国立新美術館で開催された。特に日展は、五科の出品者が大幅に増え、一万点を超えた。書の基盤の厚さがうかがえて心強く思った。書道界にとって影響力の大きい先生方の訃報が相次いだ。ご冥福をお祈り申し上げると同時に、先生方のご遺志を受け継いで、さらに書道界の隆盛に尽くしたい。
○「村上三島展」は近来稀にみるよい展覧会であった。
○第39回日展出品作「亀鑑」は、模範の意。作家としてそうありたいと願っての撰文であった。書道界はいまこそ、よい作家が生まれやすい土壌作りが大切だと痛感する。及ばずながら、その環境づくりに力を注ぎたい。(談)


松下清泉氏(天真会総務)
○篆刻家として史上初めて文化勲章に輝いた小林斗アン先生のご逝去が、今も鮮明に記憶に残る。今年は小林先生のほかにも成瀬映山先生や大平山涛先生、鈴木桐華先生など文化功労者クラスの大物が他界され、大きな衝撃を受けた年であった。
○展覧会で印象の強かったものは、まず「村上三島展」。三島先生には幾度か直接ご指導を頂いたが、王鐸の熱心なご研究ぶりや、調和体普及の提唱など、今も脳裡から離れない。「木村知石生誕100年展」の素晴らしい催しも印象に残る。
○このところ、古典を鑑賞しながらつくづく考えることがある。明清時代の古典は大変幅が広く特異性のあるものが多い。しかしその特異性を追求してみると、墨色、にじみ、渇筆、余白などにそれぞれ深みや味わいの違いがある。要は自分なりに深く学び、自己の世界を作ることだ。


三上栖蘭氏(書道玄海社会長)
○今年は書道界の大御所が相次いで逝去され寂しい年になった。成瀬映山、小林斗アン、大平山涛の各先生をはじめ、著名な先生方の急逝は、心が痛んだ。当会でも愛知の牧麗水氏(常任理事)が黄泉に旅立たれた。
○小川秀石先生の個展は、今までにないほど観者の心を捉えて作家の心情が深く訴えられる凄い書展で感動を受けた。毎日書道顕彰(芸術部門)ご受彰は、的確な評価がなされたと思う。
○国立新美術館での「日展100年」展では、過去の作家の美術に対する姿勢などが分かり、懐かしい思いで見た作品も多かった。しかし書部門では、その作家の代表作があまり見られず残念だった。同館を会場に第59回毎日展も開催されたが、会期や陳列方法などには一工夫が欲しいと思う。小学校などで扱う書道に関する授業は、「書写」ではなく伝統芸術としての位置づけで教科に導入する方向を、ぜひ実現して欲しい。


水嶋山耀氏(尋牛会会長)
○長寿国日本。それでも大物書家のご逝去は書道界にとって大打撃。特に篆刻の小林斗アン先生、新しい自己の世界を展開されていた近代詩文書の大平山涛先生、誠に残念なことだ。今後の若人の活躍に期待してやまない。
○今を時めくのは、NHKの大河ドラマ「風林火山」の題字を揮毫した柿沼康二氏ではなかろうか。油の乗り切った彼は、ニューヨークをはじめとする海外での書展や席上揮毫に活躍中だが、さらなる大発展を切望する。
○私自身のことで恐縮だが、去る10月「お・こ・ま・ひ展」を大阪・池田市のギャラリーベガで開催。親父は書、娘は絵画、孫はパッチワーク、ひ孫は書や画の出品。家族四世代にわたり内容も多種多様で、このような展覧会は初めてで面白かったと、多くの人に喜んで頂けた。


森 桂風氏(桂風会主宰)
○創玄書道会名誉会長の大平山涛先生が逝去された。誠に寂しい限りである。
○金子鴎亭先生の念願であった芸術の発信地となる国立新美術館が完成し、本年はその会場において第59回毎日書道展が開催された。特別陳列として生誕100年記念「いまに生きる金子鴎亭の書」展が開催されたことは、特別研究生であった私にとって感慨無量であった。「村上三島展」は、大きな足跡を残された先生の作品群から、一生を通じて研究に邁進された書の奥旨の深遠さを感じ、尊崇の思いひとしおであった。「山田太虚古稀記念書展」は、呼吸の長い表現法が臨書から生み出されていて、固有の生命感を作品に内蔵した書に敬服した。「西野象山古稀展」は線表現にぬくもりがあり、豊かな表情が自然に表現されて穏やかな風趣を醸し出していた。
○来年1月には毎日書道会若手有志による第1回「墨輪展」が開催されるという。大作披露とのこと。新しい挑戦に期待したい。


渡辺墨仙氏(墨佑社主宰)
○あらゆる芸術界の永年の悲願ともなっていた大規模な展示場が、国立新美術館として東京の文化の新都心ともいうべき六本木にオープンした。その文化の殿堂を全館使用しての初めての大展覧会が「第59回毎日書道展」で、従来の東京都美術館と国立新美術館の両会場を使用し、ほぼ一カ月にわたり全国の全役員、全入選作品を展示するという快挙を成し遂げた。特別企画として、「生誕100年記念・いまを生きる金子鴎亭の書」展が一段と輝かしい花を添えたことも忘れられない。
○来年は毎日書道展もいよいよ第60回という大きな節目を迎える。特別企画展としては、金子鴎亭先生と共に手を携えて毎日書道展の創設に最大の功績のあった巨匠飯島春敬先生多年のご労苦の結晶ともういうべき貴重な古筆を中心とした「飯島春敬コレクション名品展」(仮称)を開催することになった。


渡辺 麗氏(「誠海賞」選考委員)
○「素朴な自然なもの、従って簡潔な明朗なもの、そいつをさっと挙動で掴まえてそのまま紙にうつしとること、この表現は〈単一表現〉の美しさ」…、これは太宰治の「富岳百景」の一節。イタリア・ミラノ市での小作品の発表展示のため、11月末日から数日間同市に滞在中、私の心の均衡を支えてくれたことばである。書の持つ魅力、生命観、筆勢や筆触に託して精神の内部からほとばしる表現を感性、感覚で受け止めて見入ってもらえないものか。書が世界の芸術として認められる時が来て欲しいと思う。
○これからの書の未来図を考える時、若い世代が生き生きと書の本質を語り楽しめる時間と空間が存在し得るよう、私たちは自らを掘り起こし、日本だけにとどまらず世界的視野に立って書の表現としての意味を、問い正していくべきだと思う。


(書道美術新聞 (第882号) 2007年12月15日版 5面)



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