【リレー論壇[2]】“新指導要領”期待と課題

掲載日: 17年02月01日 | カテゴリ: トップ記事

届くか?!“94万人の声”(長野秀章)

都内の小学校での「水書き実践」風景 学習指導要領のこのたびの改訂は、2016年12月の中央教育審議会(中教審)答申を受けて行われるもので、小・中学校については2030年頃までの学校教育を視野に入れた教育課程の改訂作業である。

 そしてこの改訂に向けた書写・書道教育に関わる中教審・教育課程部会の国語ワーキンググループの委員の1人として宮澤正明氏が、芸術ワーキンググループの委員の1人として私が、審議に参画させていただいた。

 なお、高等学校についての改訂は17年度末までに行われるとされており、改訂のための作業部会の会議が、現在まさに進行中であることをまずご報告しておきたい。
 ◇ ◇ ◇
長野氏
小学校「書写」の改訂

 このたびの改訂に向けては、とりわけ小・中学校の国語科「書写」の内容に関して2013年6月に文部科学大臣に提出した要望書(高等学校に関する要望事項も含む)の内容の実現を目指す、足かけ約6年にわたる運動であったが、私はこの要望書提出6団体の1つ、全日本書写書道教育研究会(全書研)の理事長として関わらせていただいてきた。

 そして書写・書道教育推進協議会(要望書提出6団体で構成)を中心に、この要望書において提起させて頂いた、「毛筆を小学校第1学年から取り上げる」ことの実証研究のため、小学校の第1、2学年の書写授業において柔らかい用具、毛筆(水書などの軟筆等も含む)を使用する効果を確かめる研究協議を重ねてきた。これには各新聞社、各書壇、全国書道用品生産連盟等のご支援もいただき、さらには書道国会議員連盟の強力な応援も頂戴して、言わば「国民運動」とも言うべき、大きな渦のような動きとなって現在に至っている。

 従ってこのたびの改訂で、小学校の低学年における指導内容が現行の学習指導要領より少しでも前へ進むとするならば、昭和43年に当時の藤原宏・教科調査官などのご努力で毛筆が小学校第三学年以上に必修として位置付けられて以来の、大変大きな改革となると言って過言ではないだろう。それはまさに、2014年に書写・書道教育推進協議会が実施した「書写・書道教育充実のための署名活動」にご賛同いただいた全国94万人の声が届いたということにもなるのである。

「国民運動」として

 「国民運動」のフレーズは、このたびの一連の動きに異を唱えている一部の研究者、書壇、学校現場、教育関係者の声を無視しているようで、全書研の理事長としてはやや辛いものも感じるが、全日本書道連盟の理事会の場や書写・書道教育推進協議会の中でも、「国民運動」のような大きな動きとなるようにしていただきたい旨の発言は、幾度かさせていただいてきた。

 あの署名運動の実施にまで盛り上がっていった時、平成元年頃の「日本書道教育会議」のことを思い出した。「日本書道教育会議」は、当時の書壇の重鎮方や教育研究者達が大変ご苦労されて結成され、募金活動までされて書写・書道教育の充実のために尽力されたと聞いている。

 当時どういう事情があったのかわからない人間が軽々にものを言うこと自体大変無礼なことではあるが、結果としてよくわからないままになってしまったと記憶しており、今回の動きに際しては、「先轍を踏まず」ということが頭をよぎった。

 そして、このような署名運動をはじめとする国民運動的な盛り上がりは、テンションが上がるにつれて具体的な方向性を見失うこともあるので、様々な会議に参加しながら、どう具体的な動きにつなげていくかというビジョンが大切と思い、どのようなグランドデザインを描くかということを常に考えていた。

貴重な浄財に感謝

 このような改訂期には、学校教育に関わる様々な団体や組織が署名簿と要望書などを持って猜顕幣雰悗猫瓩垢襪箸いΔ里蓮△茲ある話である。
 このたびの運動の中心となったのは、書写・書道教育推進協議会の中に設置された実務者会議(加藤祐司座長)で、具体的な活動の1つとして全国に「水書き実践」の募集をして、これまでに別表の20校の参加を得ることができた。

 特に都内の5つの小学校での「水書き実践」の研究については、何度も検討が加えられ、要望書の内容に関する検証(エビデンス)として全書研が中心となって報告書を作成し、この新聞紙上をはじめ、全書研の東京大会(平成27年度)、埼玉大会(平成28年度)のそれぞれにおいて配布するとともに、要望事項に対するエビデンスとして文科省に報告書を提出させていただいた。

 また、全国大学書写書道教育学会の宮澤正明理事長(当時)には、学術的視点からの(本紙2面へ続く)



(書道美術新聞 第1092号1面 2017年2月1日付)



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