”市場沸騰”の兆し

掲載日: 10年01月15日 | カテゴリ: 書道美術新聞【1面】

「北京匡時国際拍売」の会場風景瑞図「心経」1千万元(1億4千万円)
白熱の競り
中国書画オークション探訪記


 打ち続く世界不況の中で独り元気な中国経済だが、その日の会場もさながら高度成長期の日本の「交換会」(美術商同士が作品を売り買いしていた市)の再来をみているような活況だった。昨夏も八大山人の「仿倪山水」に史上最高額となる11億円をつけるなどして話題を呼んだ「北京匡時国際拍売」(董国強社長)のオークション現場を見に行って来た。張瑞図の「写経巻」の競りが白熱し、10数分のやり取りの末に1,010万元(手数料を加えて日本円で1億4,700万円)で落札者が決まった時には、満場に拍手が鳴り止まなかった。あー、単なる金持ちのマネーゲームじゃなく、猝餌欧諒瓩鮗蕕蹐Δ箸靴峠犬泙辰討い訖佑燭舛覆里世福次△伐めて思った。(か)
 
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張瑞図「行書般若心経巻」(部分)趙孟頫「行書千字文巻」(部分)文徴明「行書詩巻」(部分)
 「匡時拍売」(カウンシル)の2009年秋のオークションは、12月14日から16日まで北京市内の五ツ星ホテル、亜州大酒店の大宴会場で開催されていた。今回は、「近現代絵画」「宮廷芸術品」「文房珍玩」など12の部門が設けられ、3日間にわたって午前10時から夜間まで、合わせて約1,350点の美術品が、単一の会場で次々にオークションにかけられていた。後で聞いたところでは、落札率は約8割、出来高総額は日本円で実に90億円を超えたという。

 この中で今回の探訪のお目当てはというと、むろん「古代書法」「近現代書法」「揚州画派」の3部門で、これらは幸い15日にまとまって行われていたので、都合がよかった。空港から直行して会場に入ると、壇上中央の演台には槌(玉かも?)を持って競りを取り仕切るオークショナーが仁王立ち(?)している。その脇には、落札品の伝票を持って走り回る男女のスタッフらが控えている。座席を埋めている客は100人ではきかない。客席横、壁際の一段高くなっているところにはコールセンターがあり、10数人のオペレータが電話にかじりついている。会場に来られない遠隔の客も、電話を通して競りに参加できる仕組みだ。


 張瑞図の「行書般若心経巻」(1622年作・35×709僉砲掛かったのは、午後3時過ぎだった。瑞図50代の脂の乗り切った時期の傑作で、「楊嘯谷題跋、日本近代著名学者岩村成允旧蔵、好喜斎蔵品」と注記がある。エスティメート(参考価格、落札予想価格)は、「180万‐250万元」となっている。日本円だと2,000万円台見当、といった見立てなのだろう。オークショナーの発声は「100万」からスタートしたが、初めから会場の関心は高く、次々に手が上がり、どんどん値が釣り上がっていく。エスティメートの上限も、あっという間に狡眠甅瓩靴拭2饐譴任六筝譴眈辰─▲ークショナーの甲高い声だけが響く。しかしそれも、「500万」を超えたあたりからはピッチも鈍ってきて、会場にも「そろそろかな」といった空気が漂い始めた。そこまでは5分足らずだった。そして、誰がこの場の主役かも見えてきた。若い、といっても40前後位か、身なりはお世辞にも立派とはいえない青年が、会場内をうろうろ歩き回り、席に座っている客たちと冗談を交わしながら、オークショナーに合図を送り続けている。実はこの人物、北京在の実業家で、株取引でも大きな成功を収めている名物男らしい。そして、競りはいよいよ一騎打ちになった。しかし、青年の相手は会場にはいない。コールセンターの電話の向こうから指し値を出し続けているのは、不動産会社のオーナーだという。それからは、5万元上がったかと思うと、30万元、50万元とハネ上がるなど、まさに駆け引きの世界。長かったように感じたが、やはり5、6分のことだったか。そして、会場が固唾をのんだ2人の意地の張り合いは、ついに青年が首を横に振って猴鄰絖瓠瑞図は1,000万元を超えた値段で不動産業者のものとなった…。


 このようなやり取りでこの日、落札された「古代書法」作品は148点中122点。その中には、王鐸の長条幅(草書・242×53僉砲102万元、祝允明の書軸(草書・72×26僉砲200万元、文徴明の詩巻(行書・55×1458僉砲520万元、趙孟 の行書千字文巻(25×269僉砲620万元、といったわが書道界でも関心を引きそうな作品が多数含まれており、見物人にとっても、犹埔貶騰瓩涼しを実感した3時間だった。

 なお、「近現代書法」の方は、「古代」に比べればさすがに値段のケタが1つ減るが、それでも康有為、呉昌碩、于右任、斉白石、林散之、孫文などは大変な人気で、日本円で数百万円から1千万円を超えるような場合も少なくなく、高い関心が窺われた。中では、孫文が明治天皇の御落胤とかの堀川某のために書いたものという「天下為公」の紙本横額(36×118僉砲烹械隠伊元がついたときには、会場では暫くどよめきが消えなかった。

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 同オークションのついての問い合わせ等は、萱原書房・蚤の市係(TEL03−3462−5251)、またはシンワアートオークション(TEL03−3520−0066)へ。




(書道美術新聞 第930号1面 2010年1月15日付)



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