(1)      (昭和51年6月7日第三種郵便物認可)美術新聞社報 平成29年(2017) 11月24日(金曜日)
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中国、「繁体字」回帰か
掲載日: 13年07月01日

中国狃駛ゞ軌薛疊緩楸化 小3から
「楷書古典」臨書を必修化
「化度寺碑」など例示


 中国で今年4月から小・中学校用の新しい「書法教育指導要綱」が実施され、全国の小学校で3年生から唐宋名家の楷書古典の臨書学習が必修化された。

 高学年ではさらに古典の鑑賞を通して篆・隷・楷・行・草の字体に対する理解や美的感覚を養う指導も指示、中学以上では行書や隷書の臨書学習も推奨するなど、従来はご多分に漏れず犒然鴫臭瓩叫ばれてきた「書法教育」を抜本強化した内容で、同時に教員には学校単位で指導力の改善努力も課している。

 この動きは中国が半世紀以上にわたり堅持してきた「簡体字政策」の見直しに着手したものと見ることが出来、今後の動向が注目される。

 ◇ ◇ ◇

 「要綱」はまず、小学1、2年生には硬筆(鉛筆)を用いた「正楷字」(「簡体字」)の基本筆画や偏旁、部首、筆順の指導の徹底を指示した上で、3年生からは硬筆学習も継続しつつ、一方で毛筆による「学習用毛筆臨書楷書字帖」の臨書学習を必修化し、これにより伝統的な楷書体の漢字の基本的書法と、各文字の「筆画と間架結構」を理解させるように指示している。

 そして「要綱」は、添付したリスト(別項参照)で欧陽詢、褚遂良、顔真卿、柳公権、趙孟頫の5名家の各2点の名蹟を挙げ、

 「臨書課題はこの中から選んで取り上げることを推奨する。しかし教師は、授業の実施内容や自分の考えでその他の碑帖を合わせて用いても構わない」としている。

 つまり、あくまでもこの5名家の楷書を第一義的に臨書課題とすることが原則ということである。


 また「要綱」は同時に、5、6年生からの鑑賞指導のための「教材」として戦国期の書蹟から近・現代の名家までの計30点・人を挙げ、「書法鑑賞を指導するには、特に推薦するこれらの作品を授業の需要に応じて選ぶように」としている。


 つまり、こうした新手法が中学や高校段階ではなく小学校レベルで打ち出されたわけであるから、これにより今後の中国における書法教育は中国の人々の漢字に対する素養を大きく改善することは必定で、それは引いてはこれからの時代社会、特に漢字文化圏の文字環境にも少なからず影響を及ぼすものと考えられよう。

 従って今回の動きは、中国政府がその建国以来「識字における負担軽減」を錦の御旗に実施してきた「簡体字政策」を大きく方向転換しようとしていることを意味し、将来的な「繁体字への回帰」に向けた第一歩と見ていいのではあるまいか。


 今回、中国政府教育部(文部省に当たる)が、この「中小学書法教育指導要綱」を正式に全国の各省、自治区、直轄市の教育庁(教委)などに宛てて公布したのは、今年1月18日のことであった。

 同部はこの新要綱を、「2010年代に10年計画で進めている国家中長期教育改革プロジェクトの一環」として、「中華民族の優秀な文化をさらに振興し継承するために」専門家会議が策定した内容だとし、「2013年春からの実施」を求めたことから、教員側の準備も教材等の準備も整っていない中で全国の各教育現場では今、学校単位で慌ただしく対応に追われているといわれる。


 このため同部でも、4月19日付で書法教材の審査状況や、教材供給の進捗状況、見通しを全国に「公告」するなど、準備が後手に回ったことによる混乱を少しでも抑えようと努力している節が窺われるが、中国では珍しいといわれるこうした対応こそ、今回の動きに関する中国政府の本気度を示していると見ることもできそうだ。


 なお、実は今回の動きは既に一昨年、2011年夏から始まっていたことが分かっている。

 美術新聞社が同年秋に入手した、同教育部が全国の学校教育現場に対し、書法教育について狠躇婀起瓩靴進現顱米映8月2日付)は、「書法教育に関する教育部の規定は、小・中学校では必修科目と課外活動の両面から取り組むことができるようになっている」と改めて示し、「しかし義務教育段階では必修科目として書法教育を行うべきだ」と教育現場における現況に警鐘を鳴らした上で、

 「小学1〜3年生には、主に硬筆で書字能力を育成すべきだ。硬筆では簡体字を上手に正しく書けるようにすることを目標にし、さらに3年生からは毛筆も用い、古典的な楷書作品の臨書学習も始めさせることが望ましい。また、名高い古典の作品鑑賞なども取り入れるようにしたい」
などと、かなり踏み込んだ指示を出していた。

 つまり今から考えれば、今回新「要綱」によって打ち出された小学校段階での古典臨書の必修化や鑑賞指導強化の方針は、既にあの当時から固まっていたことを窺わせる。

 そしてこれに先立つ2009年春に、国際的にも大きなニュースとなった、全国政協会議(「全人代」に対して第二院的な性格をもつ国家機関)で「簡体字が中国の伝統文化の継承を妨げている」と「繁体字回帰論」が初めて公然と提起された、あの流れの延長線上にある動きと見ていいのかもしれない。

◎「要綱」が推薦する臨書範本一覧

【楷書】
▽欧陽詢「化度寺碑」
▽ 同「九成宮醴泉銘」
▽褚遂良「雁塔聖教序」
▽ 同「大字陰符経」(伝)
▽顔真卿「多宝塔碑」
▽ 同「顔勤礼碑」
▽柳公権「玄秘塔碑」
▽ 同「神策軍碑」
▽趙孟頫「三門記」
▽ 同「妙嚴寺記」
【行書】
▽王羲之「蘭亭序」(神龍本)
▽顔真卿「祭姪文稿」
▽蘇軾「黄州寒食詩巻」
▽趙孟頫「洛神賦」
【隷書】
▽乙瑛碑
▽礼器碑
▽史晨碑
▽曹全碑


◎鑑賞用作品一覧
▽泰山刻石
▽皇象「急就章」
▽石門頌
▽西狭頌
▽張遷碑
▽鍾繇「宣示表」
▽陸機「平復帖」
▽王羲之「得示帖」
▽王献之「中秋帖」
▽王鐸「伯遠帖」
▽張猛龍碑
▽智永「真草千字文」
▽等慈寺碑
▽孫過庭「書譜」
▽靈飛経
▽張旭「古詩四帖」(伝)
▽懐素「自叙帖」
▽黄庭堅「松風閣」
▽米芾「蜀素帖」
▽趙孟頫「道徳経」
▽王鐸作品
▽呉昌碩作品
▽于右任作品
▽魯迅作品
▽沈尹默作品
▽郭沫若作品
▽毛沢東作品
▽林散之作品
▽沙孟海作品
▽啓功作品




(書道美術新聞 第1010号1面 2013年7月1日付)


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