(1)      (昭和51年6月7日第三種郵便物認可)美術新聞社報 平成29年(2017) 6月29日(木曜日)
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井茂圭洞氏、FM・大阪番組に出演
掲載日: 17年03月15日

平松愛理DJ相手に倏弁
「CHEER UP! MORNING」に、2回
収録中の井茂氏と平松さん

 大阪のラジオ局「FM・大阪」で毎週土曜日朝(八時〜)に、シンガー・ソングライターの平松愛理がDJを務める人気番組「CHEER UP! MORNING」の「ヒラマツ応援団」コーナーにこのほど、3月4日と11日の2回にわたって井茂圭洞氏が出演。
 
 井茂氏は平松DJを相手に、かなの魅力や、日本の書道文化のユネスコ無形文化遺産登録運動などについて熱く語った。以下に、その抄録をご紹介する。

 ◇ ◇ ◇平松DJと井茂氏
 
「書」との出合い

 平松愛理 今日のお客様は、日本芸術院会員で日展副理事長を務めておられる書家の井茂圭洞先生です。この番組では初めての男性ゲストで、ドキドキしています。(笑)小さい頃、圭洞先生の娘さんと私、同級生でしたので、今回ゲストにお迎えするというのはちょっと不思議な感じです。どうぞよろしく、お願い致します。
 
 井茂圭洞 こちらこそ…。

 平松 それでは、今日は先生に、かな書道についてお話を伺うんですけども、実はFM・大阪のこの番組のブログに、先生のかな書作品をアップしております。リスナーの皆さんは、ぜひそれをご覧頂きながらお聴き頂くと、より分かりやすくお伝えできるのかなと思います。ではまず、先生の書との出合いについて、教えてくださいますか。

 井茂 私はもともと悪筆でしたので、高等学校の時に、字が少し整えて書けたらと思って、そのために入部した書道部で、日展の評議員をされていた深山龍洞先生と邂逅することが出来たのです。
 
 平松 そうなんですか。
 
 井茂 ですから、その先生が漢字がご専門か、かなの先生かとかは全然関係なしに、日常の文字が美しく書けたらという思いだったのです。書の道に進もうなどとは、まったく思ってもいませんでした。字を書くことは、不得手なほうだったですからね。
 
 平松 えー! 
 
 井茂 ところが、教えて頂いているうちに、深山先生のご様子がほんとに一筋であるということがよく分かりまして、いつか字が上手に書けたらというようなことは通り越して、先生のような日常生活が送れたらと。そういうところから、書道の道に入ったわけなのです。

 平松 その当時、その先生がおっしゃっていたことで、今でも深く印象に残っていることって、何かありますか。
 
 井茂 当時は昭和30年ごろですから、戦後の西洋文化が華やかな時代で、日本の伝統文化は、どの分野でも下火でした。ですから深山先生は、「私は日本の伝統文化の1つである書道を、次の世代に引き継ぐ橋渡しの仕事をしている」と、口癖のようにおっしゃっていましたね。

 平松 それで井茂圭洞先生も、次の世代へ橋渡しをと思っていらっしゃるわけですね。では、かな書道ってどこが魅力かということを、お伺いしたいと思います。


「平仮名」の美しさ
 
 井茂 漢字の草書を、さらに画数を減らして簡単にしたのが平仮名です。漢字が大変直線的で、構築性のある強い感じがするのに対して、かなは曲線が主で、線自体が芳醇にして温かい感じです。そして、かなの美しさのもう一点は、形の中にある空間です。白いところですが、これが大変大きな役割をしているのです。
 
 平松 はい。

 井茂 平仮名は、ちょうど適当な空間を持っていることで美しい姿をしているのです。
 
 平松 なるほどねえ。

 井茂 ですから、これこそが日本のわびさび、幽玄の世界を尊ぶ日本人の大切なアイデンティティーだと、私は思っています。そして、これは文字ではないのですが、弥生時代の銅鐸というものがあります。そして5、600は知られている銅鐸の中に、4つだけ絵が描かれているものがあるのです。
 
 平松 ああ、この鳥の絵の線ですね。

 井茂 そう、サギや亀や魚が描かれているのですが、ある時、その絵の曲線が平仮名の線に近いと気づきましてね。平仮名は、文字としては草書から生まれたものだとしても、その基になった感性は弥生時代から日本にあった、この感性が平仮名を作りだしたのだという仮説を立てているわけなのです。
 
 平松 そうなんですか。とても深いお話だと思います。

 井茂 私はよく、かなの美しさを川の流れにたとえます。川が流れていく時、傾斜がきついと急流になります。川幅が広くなりますと、緩やかに流れます。断崖絶壁では、滝になります。
 
 平松 はい、そうです。

 井茂 ですから、普通に穏やかに流れている時は弦楽器の調子、岩の間を流れる時は打楽器の調子。これはまったく、音楽的な流れ方と一緒です。ですから、書道のことを「凍れる音楽」とおっしゃった学者の方もおられますが、特にかなの流麗美と音楽は、とても共通点があると私は思っています。
 
 平松 なるほどー。

 井茂 そして、かな書道にしかない構成法に、「散らし書き」というものがあります。この作品(略)を見て頂きますと、2つの集団から出来ています。初めの集団は字数も少ないですし、面積も小さい。第2集団の方は、字数も多いし概形がタテ長です。
 
 平松 そうですね。

 井茂 そして、初めの集団の下には広い空間があります。
 
 平松 はい。
 
 井茂 この何も書いてないところを美しく見せるのが、「散らし書き」の醍醐味なのです。私はこれを、「要白の美」と呼んでいます。


かなは「猴彷鬮瓩糧」
 
 平松 「余白の美」ですか。
  
 井茂 普通は「余白」と書くのですが、私は特に「要白」と言っているんです。
 
 平松 そうなんですか。

 井茂 かなの美しさは、アンバランスの美です。そして紙面に強弱を付けることによって、平面を立体的に見せようとします。書は見るよりも感じて頂くものですから、私はどちらかというと抽象的な見方で作品を作っていますね。

 平松 そういう作品づくりのために感性を常にシャープに保つには、どんなことをなさってますか。
 
 井茂 初めはあまり考えませんでしたが、勉強を重ねるにつれて、考え方はどんどん変わってきていますね。芸術はすべてそうでしょうが、まずは真似るところから始まります。初めはとにかく先生の調子を習い、そこから自分に合ったものを吸収し、さらにいろいろなものをブレンドしていって、他人と違う自分自身のものを作り出そうとするのが勉強です。ほんとに自分が創り出したものを書けるようになりたい。でも、まだまだです。

 平松 そうやって、常に新しいオリジナリティーを求めておられるのですね。一生、勉強だとお考えになっていることがよく分かりました。それでは、今後の展望、課題などはどのようにお考えですか。

 井茂 日本の伝統文化の一つであるかな書道を、伝統そのままではなく、自分なりのものを加味して次の世代の人に伝えたいということですね。そして次の世代の人々がまた、自分たちのかな書道を続けていってくれること。そうなって欲しいと願っています。
 
 平松 はい。

 井茂 そして伝統が途切れることのないようにするうえで大事なのは、やはり学校教育です。小・中学校の書写をいかに充実させるか、高等学校の書道をいかに充実させるか。これは本当に、しっかりと考えていかねばならない問題です。


「無形文化遺産」登録へ 
 
 平松 先生は、日本の書道文化をユネスコの無形文化遺産に登録しようということで活動なさっていると伺っています。

 井茂 はい。それはちょうど、私たちは空気がなかったら生きてはいけないのに空気に感謝するというような気持ちがあまりないのと同じように、私たち日本人は、平仮名がなかったら大変困るはずです。世界に冠たる『源氏物語』も『枕の草子』も生まれなかったでしょうし、日本の文化のこのような発達、普及は、平仮名なしにはあり得なかったことでしょう。そういうことを私たちが少しでも考え、そして世界の人々にも少しでも分かって頂くために、ユネスコの無形文化遺産登録を実現したい、というのが私の願いです。
 
 平松 和食も、登録が実現しましたね。

 井茂 そうです。登録実現には、長い道のりが必要です。私の願いは「かな」から出発したのですが、いろんな方のご指導を頂いて、今は「日本の書道文化‐なかんずく書き初め」という形で登録を目指し、多くの方々と力を合わせて頑張らせて頂いております。
 
 平松 よく分かりました。では、リスナーのみなさん、応援しましょうね! 今日はどうも、ありがとうございました。
 
 井茂 どうか、よろしくお願い致します。ありがとうございました。(文責編集部)



(書道美術新聞 第1095号1面 2017年3月15日付)


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